ブックタイトル東北大学 アニュアルレビュー2014

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概要

東北大学 アニュアルレビュー2014

教育の取組紹介ー高大連携ー教育の取組紹介ー社会人教育ーAnnual Review 2014東北大発・高大連携プログラム「科学者の卵養成講座」講義風景イノベーションとデザイン生活世界の創造とデザイン今世紀の「環境・食糧・人口爆発」など複合的な課題への対策には、多面的アプローチと領域横断的解決能力のある科学者が必須です。「理数科離れ」は、将来の科学力、産業力を貧弱にし、資源の少ない日本は、科学力を基盤としたさまざまな産業に貢献できる人材育成が急務です。こうした背景のもと、2012年八月の中央教育審議会への諮問に「高校教育と大学教育の連携強化」が盛り込まれましたが、モデルケースもなく、個人ベースの高校への出前講義などが高大連携の主流でした。自然の中の科学を発見・探求できる多面的な視点を持った人材養成を目的とし、理科系研究科を横断する高大連携プログラムとして「科学者の卵養成講座」を立案し、理系に強い意欲を持つ高校一・二年生を対象に、大学の視点で高校教育内容を超えた教育を行うしくみを構築しました。2009年からの実施に向け、JST((独)科学技術振興機構)プログラム「未来の科学者養成講座」(注)に応募・採択され、本学の発展のために総長が重点的に配分する総長裁量経費の支援も受け、スタートしました。(注)全国で四年間に十八校が指定。2012年より「次世代科学者育成プログラム」に展開。私たちの生活はさまざまな人工物を利用することで成り立ちます。それには、コンピュータのような製品、郵便のようなサービス、学校のような組織、さまざまな目的を達成するための仕組みなど、人間がつくったあらゆるものが含まれます。デザインという言葉は多様な意味で使われていますが、ここでは、私たちの生活をより望ましいものにする、実現可能な人工物を構想することとして捉えます。人工物の価値はそれを利用することによって得られる経験に依存し、その実現可能性はそれをつくるために利用可能な技術に依存します。私たちの生活世界を現在より望ましい形に変えていく際に、生活世界と技術を結びつけて新しい人工物を構想するというデザインの役割はきわめて重要であると言えます。デザインには、どのような機能をもつ人工物にするかという構想、その機能を実現するために適切な技術を駆使する工学的設計、ユーザーの感情的・美的価値を高めるためのスタイリングなどの要素が含まれます。しかし、新しい生活世界の創造にとって最も重視すべき要素は、私たちの生活世界をより望ましい形に近づけていくためにどのような新しい経験を提案するかという問いへの答えを見つけること、すなわち「経験デザイン」なのです。「科学者の卵養成講座」の活動内容当初、生命科学研究科に事務局を置き、理学、工学、農学、生命科学研究科の教員が運営し、理系研究科で実施するプログラムを開始しました。初年度は東北地区を中心に全国から400名を超える応募があり、100名を選抜し、地理的制限を受けないように、旅費を全面的に補助しました。毎回分野の異なる2名の教員が講義を行い、講義後レポート作成、質疑応答後、その場でレポート作成する即時対応力の育成にも努めました。レポートには教員が加筆・返却し、今世紀の「環境・食糧・人口爆発」など複合的な課題への対策には、多面的アプローチと領域横断的解決能力のある科学者が必須です。「理数科離れ」は、将来の科学力、産業力を貧弱にし、資源の少ない日本は、科学力を基盤としたさまざまな産業に貢献できる人材育成が急務です。こうした背景のもと、2012年8月の中央教育審議会への諮問に「高校教育と大学教育の連携強化」が盛り込まれましたが、モデルケースもなく、個人ベースの高校への出前講義などが高大連携の主流でした。自然の中の科学を発見・探求できる多面的な視点を持っレポート内容の何が優れているかをフィードバックし、受講生・保護者から書く力、まとめる力が伸びたと評価されています。講座では将来への目的意識を明確にするためのキャリア教育や大学生・大学院生との討論会、異なる高校の受講生が交流する場として、植物園・博物館・サイクロトロン・図書館見学なども行いました。レポート評価から30名を再選抜し、数名単位で研究室に配属し、実習を行いました。教員・学生と議論・検討し、結果をまとめ、年度末に発表会を実施し、実験で何が起き、どのように解析、理解するのかという眼を養成しました。この4年間で前記以外にも、医学系、医工学、環境科学、情報科学、教育学等の研究科、電気通信研究所、原子分子材料科学高等研究機構の方から講義、実習の協力を頂きました。全国発表大会での優秀表彰者、各学会主催の高校生発表会での表彰者も多く輩出し、学術論文発表や特許取得にもつながる成果を挙げた受講生も出ています。経験デザイン発想からのイノベーションイノベーションとは、価値ある新しいものを生み出して私たちの生活世界に普及させ、その価値を実現していくことです。これまでイノベーションは主として、新技術の開発を重視する「技術中心発想」と、既存ユーザーの経験や不満などの改善を重視する「ユーザー中心発想」で行われてきました。ところが、21世紀におけるイノベーションにとって最も必要な考え方は、「経験デザインからの発想」なのです。経験デザインとは、私たちの現在の生活経験をより望ましい方向へと「大きく」変えるような新しい経験を描くことです。経験デザイン発想からのイノベーションの例としては、アフリカの子供や女性たちを生活水運搬の重労働から救済したQドラムや、音響機器のある室内でしか楽しめなかった音楽をいつでもどこでも楽しめるようにしたウォークマンの普及などがあげられます。地域経営人材育成とデザイン教育東北地域の産業と経済の発展は、地域企業のほとんどを占める多くの中小企業が挑戦し実現するイノベーションと新事業創出にかかっています。その実現にとって重要なことは、これらの企業が高い技術的能力だけでなく、もっと重要なものとして、すぐれた経験デザイン能力をもつことです。経済学研究科の「地域イノベーション研究センター」は、2013年9月から「地域イノベーションプロデューサー塾」を開講しました。毎年約40名の経営人材を受け入れ、経験デザイン発想からイノベーションを創出できる人材を育成します。この塾では、基礎講座、特別講座、研修、実践ゼミなどからなる体系的なカリキュラムと学内外の優秀な講師陣を編成して、理論・発想・演習・実践の融合教育を140時間以上行っています。また遠隔地の人たちにも学習機会を提供するために、岩手県花巻市と福島県会津若松市にサテライトを設置し、平日の授業はテレビ会議システムを活用してサテライトで受講できるようにしています。「科学者の卵養成講座」の将来展望今年度で四年目となり、300名の修了生を輩出し、初年度の修了生は東北大はじめ多くの大学生となり、意欲的に勉学に励んでいます。東北大発の高大連携プログラムモデルを構築でき、継続的な実施の重要性を実感しています。最後になりますが、ある受講生が「『東北大学科学者の卵養成講座』の成果は、今ではなく、必ず私たち受講生が将来証明していきたいと思います」という言葉を残してくれました。本プログラムを運営してよかったと実感できた瞬間でした。権奇哲(コンキチョル)渡辺正夫(わたなべまさお)1965年生まれ現職/東北大学大学院生命科学研究科教授専門/植物生殖遺伝学、植物遺伝育種学関連ホームページ/http://www.ige.tohoku.ac.jp/mirai/http://www.ige.tohoku.ac.jp/prg/watanabe/地域イノベーションプロデューサー塾での作業風景1960年生まれ現職/東北大学大学院経済学研究科教授地域イノベーション研究センター総括プロデューサー専門/経営学、イノベーション論関連ホームページ/http://www.econ.tohoku.ac.jp/rirc/1112