ブックタイトル東北大学 アニュアルレビュー2014
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東北大学 アニュアルレビュー2014
研究活動の動きAnnual Review 20142013.08.06カゴメ磁性体モデルで世界初の磁場に反応しない磁化プラトーを発見2013.09.26多数の連続的な動作をグループ分けし符号化する細胞を発見京都産業大学理学部・堀田知佐准教授、本学大学院理学研究科・柴田尚和准教授は、IFW理論研究所(ドレスデン・ドイツ)・西本理研究員との共同研究で、世界で初めてカゴメ格子構造をもつ磁性体モデルの磁化過程を正確に同定することに成功。5つの磁化プラトーと呼ばれる、磁場に反応しないスピン状態の存在を明らかにしました。カゴメ磁性体に磁場を加えた時に現れる磁化曲線を理論的に解明したことから、多彩なスピン液体の発現機構やその特徴を明らかにする突破口になるものと期待されています。本学大学院医学系研究科の虫明元教授(生体システム生理学)らの研究グループの中島敏助手は、サルを用いた実験で、多数の連続的な動作(順序動作)をグループに分けて効率よく符号化する、神経細胞活動を発見しました。これは、随意的行動調節においての、脳の効率的な符号化原理を解明。今後、脳の障害や治療へのアプローチ、ヒューマン-マシン・インターフェースなどへの応用の可能性が期待されます。この研究成果は、米国北米神経学会誌“Journal of Neuroscience”のオンライン版に掲載されました。2013.08.07ヒトゲノム上に遺伝子重複砂漠を発見―病気に関る遺伝子探索の新手法に期待―2013.09.27新・熱処理プロセスによる結晶粒の異常成長現象を発見―形状記憶合金の大型部材への適用が可能に―本学大学院生命科学研究科生物多様性進化分野の牧野能士助教と河田雅圭教授は、アイルランド・トリニティカレッジのイーファ=マックライザット博士との共同研究で、特定タイプの遺伝子群が周辺の遺伝子のコピー数多型を抑制することを発見しました。脊椎動物の全ゲノム重複に由来する遺伝子「オオノログ」に着目。コピー数多型はオオノログと離れている遺伝子に多く、近くの遺伝子は少ない傾向にあり、またオオノログが高密度の領域は遺伝子が増えない遺伝子重複砂漠であることも明らかにしました。この研究成果は、英科学誌“Nature Communications”に掲載されました。本学大学院工学研究科金属フロンティア工学専攻の大森俊洋助教、貝沼亮介教授らの研究グループは、新しい熱処理プロセスによる結晶粒の異常成長現象を発見しました。実際に、銅系形状記憶合金を900℃以下の温度域での冷却・加熱のサイクル熱処理によって、数cmの結晶粒を得ることに成功。これにより、数cmの断面サイズの部材として銅系形状記憶合金を利用することが可能になり、工業製品などへの応用が期待されます。この成果は2013年9月27日付のアメリカ科学振興協会発行の学術雑誌“Science”に掲載されました。2013.08.08すばる望遠鏡SEEDSプロジェクト、「第二の木星」の直接撮影に成功2013.10.21東京方言と東北の南部方言の言語処理の違いを発見―脳は育った地域方言によって音声を処理する―すばる望遠鏡による、太陽系外の惑星や原始惑星系円盤などを直接撮像観測するプロジェクトSEEDSが2009年にスタート。本学理学研究科の天文学専攻・山田亨教授が加わる国立天文台、東京工業大学、京都大学、大阪大学、プリンストン大学(米)、マックスプランク研究所(独)、チャールストン大学(米)、NASAゴダード(米)他からなる研究チームは、おとめ座の方向、地球から約60光年離れた太陽型の恒星(GJ504)を周回する惑星GJ504bを、世界で初めて直接撮像法で発見することに成功しました。理化学研究所脳科学総合研究センター言語発達研究チームの馬塚れい子チームリーダーらと、名古屋大学の宇都木昭准教授、本学大学院文学研究科の小泉政利准教授らの共同研究グループは、日本語における単語のピッチアクセントを処理する際の脳活動における左右の半球の反応差が、東京方言話者と東北地方南部方言話者間で異なることを突き止めました。これは、脳反応を近赤外分光法を用いて測定して判明しました。脳と言語発達の関係の解明に寄与する研究成果は、米国の科学雑誌Brain and Languageの掲載に先立ち、オンライン版(10/18付)に掲載されました。2013.09.13津波石分布に基づく琉球列島全域における巨大津波の頻度と規模の地域性を解明2013.11.05空間的記憶や情動的記憶をつかさどる海馬を中心とした神経ネットワークの解明本学災害科学国際研究所災害リスク研究部門の後藤和久准教授、今村文彦教授らの研究グループは、琉球列島全域を包含するように奄美諸島、沖縄諸島、先島諸島の10の島々で調査地域を設定し、サンゴ礁上や沿岸部に分布する「津波石」と呼ばれるサンゴ巨礫の有無を地質学的に調査。琉球海溝沿いにおける、巨大地震と津波の発生頻度や規模の特徴を評価しました。その結果、台風の高波に起源する巨礫は琉球列島全域に存在するのに対し、津波石は先島諸島にしか分布していないことを明らかにしました。本学大学院生命科学研究科の飯島敏夫教授らのグループは、ニューロン(神経細胞)からニューロンへ伝播する遺伝子組換えウイルスを用いて、ラットの海馬に情報を送る神経ネットワークの構造を調べました。約3分の2をなす背側と、残り3分の1の腹側はそれぞれ、空間的記憶と情動的記憶に関与しますが、今回の研究でそれぞれ脳領域から入力を受けて、情報の干渉がなく独立していることを世界で初めて直接的に証明しました。海馬を中心とした記憶形成メカニズムの解明に貢献する研究成果は、米国科学誌Public Library of Science(PLoS ONE)オンライン版(11/5付)に掲載されました。2013.09.24中性粒子ビーム加工技術により世界初、無欠陥エッジ構造のグラフェンナノリボンを作製2013.11.083Dプリンターで原子配列の方向の操作を可能に―国産オーダーメイド人工関節の実現に加速―本学原子分子材料科学高等研究機構(AIMR)と流体科学研究所の寒川誠二教授の研究グループは、寒川教授が独自に提案した超低損傷中性粒子ビーム加工プロセス技術を用いてグラフェンシートに損傷を与えず、無欠陥エッジ構造を持つグラフェンナノリボンを作製。世界で初めて104以上の高いON/OFF比をもつ電気特性を実現しました。この研究成果によって、グラフェンナノリボントランジスタの実用的な製造プロセスが見通せるようになり、超高速グラフェンナノデバイス開発への道が拓かれます。本学金属材料研究所の千葉晶彦教授らの研究グループは、金属用3Dプリンター(電子ビーム積層造形装置)で原子の周期配列を一方向に揃えられることを、人工股関節などに用いられている医療用コバルト-クロム合金を用いた実験で発見しました。これにより、国産のオーダーメイド人工関節の実現が加速します。この現象はコバルト合金以外の合金でも生じると考えられ、ジェットエンジン用タービンブレードなど、3Dプリンターを用いた金属製品の開発に重要な影響を与えます。この成果は、米国の学術雑誌Acta Materialiaに掲載されました。1516