ブックタイトル東北大学 アニュアルレビュー2014

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概要

東北大学 アニュアルレビュー2014

研究活動の動きAnnual Review 20142013.11.11有機薄膜太陽電池の電荷損失を防ぐ要因を解明―光電変換効率の向上へ大きな進展―2014.01.29サメの歯の原子構造の可視化に成功―フッ素が歯を強くする原理を解明―本学原子分子材料科学高等研究機構(AIMR)の田村宏之助教は、ドイツ・ゲーテ大学との共同研究によって、有機薄膜太陽電池において電荷損失を防ぐ要因を明らかにしました。具体的には、有機半導体の結晶性が高いと、光エネルギーで励起した電荷が高速移動し損失が抑制されることを、計算機シミュレーションによって解明しました。この研究で活用した計算機シミュレーションは、光電変換機構の理解を助け、より変換効率の高い太陽電池の材料をデザインする際に、有力な手段になっていくことが期待されます。この研究成果は、米国化学会誌Journal of the American Chemical Societyに掲載されました。本学原子分子材料科学高等研究機構(AIMR)の幾原雄一教授(東京大学教授併任)と陳春林助手、東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科の高野吉郎教授の研究グループは、世界最先端の超高分解能走査透過型電子顕微鏡を駆使し、生体材料として最高硬度を持つサメの歯の最表面にあるエナメル質(フッ化アパタイト)の原子構造を、世界に先駆けて可視化させました。さらにスーパーコンピューターで計算し、エネメル質内部のフッ素の強固な化学結合が、高い機械強度と優れた脱灰性を持った虫歯になりにくい構造を自己形成させていることを発見しました。2013.11.22細胞から細菌を排除するための鍵分子を発見2014.02.12NECとの共同研究で、無線センサの電池寿命を約10倍に延ばす新技術を開発本学大学院生命科学研究科の有本博一教授は、東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科の中川一路教授、本学大学院医学系研究科の赤池孝章教授と協力し、シグナル伝達分子:8-ニトロサイクリックGMPが、細胞内からの細菌排除を促進する鍵分子であることを見出しました。この成果は、細菌感染症の新たな治療法の可能性を拓くもので、さらに「異物」の蓄積が引き金となる他の疾患の治療にも役立つと期待されます。この研究は、米国の科学雑誌Molecular Cellオンライン版(11/21付)に掲載されました。本学とNECは、スピントロニクス論理集積回路技術を応用した無線センサ端末向けマイクロコントローラ回路(以下MCU)を新たに開発。その動作実験において、従来と比較してMCUの消費電力を1/80まで削減することを実証しました。これにより、MCUを搭載したセンサ端末の電池寿命を約10倍まで延ばします。従来、高性能なMCUは消費電力の大きさが課題でした。今回、MCU内の論理回路とメモリを不揮発化することで、MCU全体の待機電力を削減。本MCUを無線センサ端末に適用することで、消費電力を大幅に抑えながら高度なデータ処理が可能となります。2013.12.02遺伝性乳がん・卵巣がん症候群の原因となるBRCA1の新規結合分子OLA1を発見2014.02.27イネ冷害の発生メカニズムを解明し被害の緩和に成功本学加齢医学研究所の研究グループ(松澤綾子、菅野新一郎、仲山真弘、望月寛徳、魏雷震、島岡達朗、古川裕美子、加藤慧、柴田峻、安井明、石岡千加史、千葉奈津子)は、がん抑制遺伝子の一種でありその変異により遺伝子不安定性を生じ、最終的には乳がんや卵巣がんを引き起こすBRCAIの、新しい結合分子Obg-likeATPase1(OLA1)を発見しました。OLA1の機能解析の結果から、OLA1の細胞分裂における機能の破綻が発がん機構に関与することを解明しました。OLA1のさらなる解析は、難治性がんの新しい診断や治療法の開発にも貢献できることが期待されます。本学大学院生命科学研究科の東谷篤志教授らの研究グループは、古川農業試験場、名古屋大学、理化学研究所、農研機構の協力を得て、農林水産省新農業展開ゲノムプロジェクトの一環として、イネ冷害の発生メカニズムを解明。花粉を作る葯(やく)にあるジベレリン(植物ホルモンの一つ)の生合成が低温で抑えられ、活性型ジベレリン含量が低下することを明らかにし、さらに、外部からジベレリンと糖を同時に与えることで、冷害の被害を緩和させることに成功しました。この成果は、米国植物生理学誌PlantPhysiologyのオンライン版で公開されました。2013.12.12絶食とインスリン投与が膵島移植の効果を増大―糖尿病治療のための細胞移植の成績向上へ―2014.03.17チタン酸ストロンチウム薄膜の成長過程を解明―最先端顕微鏡を用いた原子スケールでの観察に成功―本学未来科学技術共同研究センター(大学院医学系研究科兼務)の後藤昌史教授、本学大学院医学系研究科先進外科の大内憲明教授、神保琢也医師らのグループは、糖尿病を対象とする細胞移植治療である膵島移植において、移植後の短期間の絶食とインスリン投与が膵島移植の効果を劇的に増大することを明らかにしました。この絶食とインスリン投与を組み合わせる新しい膵島移植手術法は、今後の膵島移植治療の成績向上へ向けた戦略を構築する上で、極めて有用な知見になると期待されます。この研究成果は、米国の国際学術誌Transplantationオンライン版(11/25付)に掲載されました。本学原子分子材料科学高等研究機構(AIMR)の大澤健男助教(独立行政法人物質・材料研究機構(NIMS)主任研究員)と一杉太郎准教授の研究グループは、超高分解能顕微鏡と酸化物薄膜作製装置を組み合わせた装置を開発。チタン酸ストロンチウム(SrTiO3)単結晶表面上で金属酸化物薄膜が成長する様子を原子レベルで観察することに初めて成功しました。その結果、チタン原子が薄膜表面に浮かび上がる、薄膜成長メカニズムを明らかにしました。この成果は、界面物性の起源の解明や新材料開発によるエレクトロニクスデバイスの創製につながります。2014.01.22有限長カーボンナノチューブ分子の幾何学指標―カーボンナノチューブの長さと充填率を定量化―2014.03.28大腸菌シグナル伝達タンパク質による生体回転ナノマシーン制御のイメージング本学大学院理学研究科・原子分子材料科学高等研究機構(AIMR)の磯部寛之教授らの研究グループは、有限長カーボンナノチューブ分子の新しい幾何学的指標を提案しました。1992年に提唱されて以来使われてきた幾何学的指標は、有限の長さと一義的な構造を持つ「分子性物質」としての指標を欠いており、有限長カーボンナノチューブ分子の登場によって、長さや原子・結合の充填率に関する新・指標の必要性が高まってきました。今回、提案された新しい幾何学的指標は、分子性物質としての有限長カーボンナノチューブ分子に関する、科学・技術の発展の基礎となることが期待されます。本学多元物質科学研究所の福岡創助教と石島秋彦教授らは、大腸菌の走化性シグナル伝達系において、シグナル伝達を担うタンパク質(CheY)の大腸菌のべん毛モーターへの結合・解離が、モーターの回転方向を制御することを、生きた細胞の中で証明しました。細胞応答とそれを担う情報伝達タンパク質を同時に捉えることで、大腸菌の情報伝達メカニズムの一端を、タンパク質の動態として理解できるようになりました。今後、同様の手法で細胞の振る舞いと細胞内のタンパク質動態を同時に捉えて、細胞内の情報伝達メカニズムの解明に近づけると期待されます。本成果は米国科学誌Science Signaling 2014年4月1日号に公開されました。1718