ブックタイトル東北大学 アニュアルレビュー2014
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東北大学 アニュアルレビュー2014
研究の取組紹介Annual Review 2014ミクロの世界が世界を開く原子・分子を詰め込んだカーボンナノチューブゴムとプラスチックの接着界面はリアス式海岸カーボンナノチューブ(CNT)は、直径が数ナノメートル(1ナノメートルは0.000001mm)の炭素でできた筒状の物質であり、従来にはない性質を持つ素材として注目を集めています。まず、アルミニウムの半分という軽さ、鋼鉄の20倍の強度としなやかな弾性力を持つため、非常に強靱なロープの素材への適用が検討されています。一方、CNTは電気をよく通すので、銅やシリコンに代わる電子材料としての応用が期待されています。この時、CNTの内部の空間にさまざまな原子や分子を詰め込むことによって、その電気的な性質をいろいろと変えることができます。また、DNAなどの生体高分子を中に詰めることも可能であり、それによって新しい医薬品の開発ができるのではないかと期待されています。写真は、さまざまなカーボンナノチューブを横から見た透過型電子顕微鏡写真です。右から、一枚の炭素シートで構成された単層カーボンナノチューブ(SWNT)、その内部に鉄(Fe)原子を詰めたもの、同じくセシウム(Cs)原子を詰めたもの、フラーレン(C60)を詰めたもの、一番左は二層カーボンナノチューブ(DWNT)にDNA分子を詰めたものです。図では、それぞれの写真のナノチューブを上から見た模式図を載せています。東北大学大学院工学研究科教授金子俊郎・助教加藤俊顕ゴムとプラスチックの接着が結構難しいと聞いたら、皆さんは驚かれるかもしれません。この2つを接着剤なしで直接接着する技術が開発されていると知れば、さらに驚きが増すのではないでしょうか。実は自動車のパーツだけでも10以上の場所でこの技術が使われています。ゴムもプラスチックも小さな分子が手に手を取り合ってできた紐状の高分子です。性質が全く異なるのは、その小さなブロック同士が違うものだからです。通常であれば、水と油のようにそれらは反発し合います。しかし仲の良いゴムとプラスチックの組み合わせを作り出すことも可能なのです。プラスチックであるポリスチレンは、構成するスチレンの分子でゴムの一種であるポリブタジエンを挟み込むと、ブロックコポリマーと呼ばれるゴムの仲間を作ることができます。このブロックコポリマー分子のスチレン部分と、ポリフェニレンエーテルというプラスチックは仲が良く、相互に拡散して、結び付きあいます。これが直接接着の原動力です。ブロックコポリマーは、環境に優しい次世代ゴム材料として注目を集めています。写真はこの接着界面の様子を観察したものです。左側がゴムで右側がプラスチックです。色の違いは、材料の硬さの違いを表しています。およそ100ナノメートルの厚みで、まるでリアス式海岸のような複雑な接着界面が形成されているのがわかります。東北大学原子分子材料科学高等研究機構准教授中嶋健・博士課程後期三年梁暁斌閉ざされた微小空間を動き回る球状粒子ハーフメタル?究極のスピンエレクトロニクス材料?大きさが数ナノメートル(nm:ナノメートルは0.000001mm)から一マイクロメートル(μm:マイクロメートルは0.001mm)程度までの粒子が気体、液体、あるいは固体中に均一に分散したものをコロイドと呼びます。液体に分散した粒子(以後、コロイド粒子)を光学顕微鏡で観察すると、不規則に震えながら動き回る現象(ブラウン運動)が見られます。電子顕微鏡写真は、コロイド粒子の一つ一つを、それよりも少し大きな殻で覆った卵型の粒子です。表紙写真の粒子を光学顕微鏡で観察すると、卵の黄身に相当する部分が殻の中でも、ブラウン運動します。ブラウン運動は周囲の環境によって変化する現象ですので、このような卵型のコロイド粒子はセンサーとしての応用が期待されます。最近では、このように殻で隔てられた粒子を触媒用粒子として利用するための開発も盛んに行われています。大きさがよく揃っている粒子は、自己組織化現象によって規則的に粒子が配列します。その様子は、表紙の電子顕微鏡写真よりも像の鮮明さに欠けますが、光学顕微鏡写真Aにおいて確認することができます。卵型粒子の殻の中にはさまざまな種類の粒子を閉じ込めることが可能で、写真Aの例では、殻の中に磁場に応答する粒子が閉じ込められています。この配列体に磁場をかけると光学顕微鏡写真Bのように、卵黄部分が磁場をかけた方向に偏り、新しい構造を形成します。このように外部からの刺激によって構造を変える粒子の規則配列体は、新しい光デバイスとしての応用が期待されます。写真B写真A東北大学大学院工学研究科教授今野幹男・准教授長尾大輔・助教石井治之東北大学では、スピンエレクトロニクスと呼ばれる研究が世界トップレベルで行われています。スピンとは、物質中の電子の自転運動のことです。電子はスピンすることで、磁石の性質を持つようになります。しかも、自転方向が逆になるとN極とS極が入れ替わり、逆向きの磁石に変わるのです。スピンエレクトロニクスとは、こうした電子の持つ電気を運ぶ性質と磁石としての性質の、両方を利用した研究分野です。従来のエレクトロニクスでは実現不可能な、大容量磁気メモリ、超高感度磁気センサなどに使用する、革新的素子を創成することをめざしています。スピンエレクトロニクスで最も重要な課題の一つは、電子のスピンの向きを一方向に揃えることです。向きを揃えることで、素子の性能を極限まで高めることができるのです。それを実現する材料が、ハーフメタルです。ハーフメタルは、片方のスピンしか存在せず、そのスピンが金属的性質を担っていることから、その名前が付いています。写真は、ハーフメタルの代表であるホイスラー合金薄膜の断面を、透過電子顕微鏡で観察したものです。ホイスラー合金はコバルト、マンガン、シリコンの3種類で構成されていますが、丸い像が個々の原子であり、コントラストの違いが異なる原子であることを示しています。コバルトの層と、マンガンとシリコンが並んだ層が、規則正しく交互に積層されていることがわかります。この規則性が性能に大きく影響しており、写真のような美しいハーフメタル薄膜は、画期的な情報記憶素子や、新しい医療機器などに応用されることが期待されています。東北大学工学研究科上の写真はコバルト(Co)、マンガン(Mn)、シリコン(Si)で構成されるハーフメタルホイスラー合金薄膜の透過電子顕微鏡像。丸い像の明るい順に、コバルト、マンガン、シリコンの原子に対応している。上図はその結晶構造であり、この図の通り、作製した薄膜はコバルト層、マンガン-シリコン層が規則正しく配列した構造になっていることがわかる。准教授大兼幹彦2728