ブックタイトル東北大学 アニュアルレビュー2014
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東北大学 アニュアルレビュー2014
卒業生の活躍Annual Review 2014私の中の「東北大学」東北大学で学んだ「客観的な視点」の重要性振り返りみて思うこと私は、子供の頃に父が買ったパソコンの魅力に取り付かれ、その勢が持論ですが、実際問題、研究を進めていく上では楽しい如何に関わらず取り組まなければならない事柄があります。この事実をどう咀嚼すべきかしばらく悩みましたが、ふと、今の自分の視点では楽しいと感じなくても、別の人から見れば楽しさがあるはず、と思うようになりました。不思議なもので、積極的に楽しさを理解しようと考えると、以前ストレスに感じていたこともモチベーションを持って取り組めるようになったと感じています。実は、現在勤める会社は在学時の共同研究先で、現在も在学時のテーマをベースに技術開発を行っています。近年は開発フェーズが商品応用に移り、品質保証など新たな仕事をする機会が増えていますが、「客観的な視点」を忘れずに、周囲の意見に耳を傾けつつ、モチベーションを持って取り組むよう心がけています。私の経験が少しでも皆様のお役に立てば幸いです。東北大学入学は2001年、今から10年少々前になります。学部は工学部マテリアル・開発系に在席し、大学院環境科学研究科にて修士・博士課程を修了後、2010年四月から現職の部署にて会社生活をスタートしました。社会経験の浅い私ですが、今の時点で過去を振り返って思ったことを、主に学生の皆さんにお伝えしたいと思います。研究室在籍時は、金属工学科の谷口尚司先生に師事し、修士・博士課程も一貫して冶金精錬に関する研究に取り組みました。私の研究生活は、非常に特殊な環境だったと思います。昼夜関係なく、特定のテーマについて徹底的に実験・解析を毎日繰返す、というものです。研究テーマの内容如何ではなく、一つのことに集中することで、専門知識はもちろんのこと、課題を解決する手段・考え、自主性、周囲の人との協力など、この期間で多くのことを学びました。また、私が修士・博士と在籍した環境科学研究科は文理融合の研究科であり、さまざまな分野の人が在籍していました。その故か、常にない経験に巡り会えました。私の場合は環境科学研究科のRESDプログラムというものが、その一例です。これは日中韓の学生が集まり、各国の環境問題などについて実地見学、議論するというもので、参加前後で自身の考え方に大きな変化が生じました。私はこの「変化」というものが重要だと思います。というのも、さまざまな変化の積み重なりが、ある日振り返ってみた時に「成長」という形で見えるものと考えているからです。そして変化を生み出すには、研究や生活、種々のことに対して、凡庸に見送らず、「考えること」が必要と感じています。入社してから感じたことの一つに、自身で成長できない人は、期待を持たれず、それゆえ信頼も得られないということです。私のような研究職であれば、技術レベルアップが成長の一形態でしょう。学生の方にも是非、東北大学在学中、あるいはその先も考え続けて、自身の中に成長の種とでもいうべき変化を蓄積してほしいと思います。東北大学の学風・土壌は自分次第で十分にこれができます。私もいまだ変化途中であり、足りないものが多いと痛感しています。明日には、ここで述べたことと考えが変わっているかもしれません。しかし、10年後、20年後、もっと先に振り返った際、この変化の積み重ねが「成長」と言えるように、私はこの先も考え続けていきたいと考えています。いのまま東北大工学部の門を叩きました。修士課程からは、半導体集積回路を手がけておられました亀山充隆先生の研究室に配属させて頂き、当時助教授をしておられました羽生隆弘先生にもご指導を賜りつつ、念願の半導体回路研究に従事させて頂きました。無論、研究過程で憧れだけでは乗り越えられない壁にぶつかることもありましたが、今思えば、それらの壁は非常に大きな糧になったと感じています。中でも、大きな財産になったのは、「客観的な視点」から物事を見られるようになったことです。趣味の範疇では自分が楽しければ良かったのですが、研究開発となると、当然のことながら社会という客観的な立場から見て価値ある成果を上げなければなりません。そんな中、趣味の延長から半導体の世界に飛び込んだ私は、自分の考えの範疇からなかなか抜け出せず、先生方からの貴重なご意見にも素直に耳を傾けられないことも多々ありました。しかしながら、相手を意識した研究発表や討論を繰り返し、相手が何故そのような意見を述べているのかを考えることで、少しずつ自分の研究価値を客観的に見る目を養っていけたように思います。根気強くご指導頂いた先生方には感謝しきりです。また、この「客観的な視点」という考え方は、研究に対するモチベーションを上げる上でも有用でした。私は「好きこそものの上手なれ」木村啓明(きむらひろみつ)1975年生まれ出身学部/東北大学工学部電子工学科卒現職/ローム株式会社関連ホームページ/http://www.rohm.co.jp新井宏忠(あらいひろただ)1982年生まれ出身学部/東北大学工学部マテリアル・開発系卒現職/株式会社神戸製鋼所技術開発本部材料研究所精錬凝固研究室勤務関連ホームページ/http://www.kobelco.co.jp/居心地の良い環境に歯科医師としての社会人大学院生の意義この度の大震災で被災された皆様に、心より御見舞を申し上げます。修士課程の2年間を片平キャンパスで過ごしました。実験結果に一喜一憂しながらも、近くの定食屋で食べる大盛五目焼きそばでリフレッシュし、校内のテニス場で研究科の方々と友情を深めました。当時を思い起こすと、大変快適な生活を送っていたと感じます。研究テーマは、窒素固定細菌を探すことでした。植物にとって窒素は最も必要な要素の一つです。そのため、窒素肥料を必要量加えなければ、植物はまともな生育をしません。一方、環境の至るところに存在する窒素固定細菌は、空気中の窒素を植物が利用出来る形に変換してくれます。都合が良いことに、この細菌は植物内に存在していることも確認されています。私は、さまざまな植物内に存在する窒素固定細菌を探しておりました。窒素固定細菌の世界的権威である南澤究教授のご指導を受け、また現在各地でご活躍されております優秀な先輩方にご助言、激励を頂けたことは、大変大きな財産となっております。突然ですが、恋愛と特定細菌探しは大変似ているように思えます。恋愛を成功させるためには、意中の相手の好物を調べ、居心地を良好にする必要があります。同じように、特定細菌を探し出すためには、菌の好物を論文などで調べ、居心地良い環境に狙いをつけ探すことが効果的であると思います。ガールズトークのような打ち合わせも大変効果的だと思います。腹を割って話せて、それでいて秘密主義…気持ちも高ぶりますよね。実社会においては、未知の世界です。何を話されているのか…恐ろしい!現在の私の職務は、化学肥料の研究、取り分け窒素肥料の研究です。学生時代に窒素肥料を減らすための研究を行っていただけに、少々微妙な気持ちになることもありますが、「寝返り」というわけでもありません。肥料の質と量により、植物共生細菌が大きく変動することが、最近になり分かりつつあります。肥料も居心地の一ファクターなのかもしれません。社会人となり、遅ればせながら「青葉城恋歌」を覚えました。歌う度に、七夕の夏を思い出します。震災報道に胸痛めながらも、杜の都の早期復興、さらなる発展を祈念しております。河原誠(かわはらまこと)1980年生まれ出身学部/東北大学大学院生命科学研究科生態システム生命科学専攻環境遺伝生態学講座地圏共生遺伝生態学講座現職/サンアグロ株式会社肥料本部普及開発グループ勤務関連ホームページ/http://www.sunagro.co.jp/私は、地元仙台の中学、高校卒業後に日本歯科大新潟校に入学、卒業し、東京にて勤務医として働きながら東京慈恵会医科大学より医学博士の学位を授与されております。その後、仙台市にて歯科医院を開業して25年になります。歯科での専門は、インプラント治療(歯が抜けた後にあごの骨にチタン製などの人工の歯根を埋め込む方法)です。インプラント治療の歴史は古く、インカ帝国時代にヒスイで作った歯をあごの骨に埋めているミイラが発見されています。近代のインプラント治療が日本に入ってきて、まだ30年ぐらいです。インプラントは、車などと違って普通の歯と同じように四六時中使っていなければなりません。また、人によってはかむ力も違いますし、固い食べ物を好む人もいます。そのためにも、インプラントが、がっちりとあごの骨と接着する必要があります。私の患者さんでも、インプラントが長持ちしている人もいますが、持たない人もいます。そんなインプラント治療に対する疑問を持っているときに、2008年に日本で初めて東北大大学院医工学研究科ができたことと、十数年以来ご指導いただいておりました初代研究科長の佐藤正明先生の薦めもあり、社会人大学院院生(博士課程後期)一期生として同年四月に入学させていただいております。私の研究は、インプラントが何故骨と付くかを解明することと、チタン表面に骨が素早く接着するための新しい表面加工と骨を作るための材料の開発でした。東日本大震災では、細胞実験が全てだめになり、動物実験もあやうく中止になるところでした。幸いにも研究結果から今まで、なぜ、チタン金属表面が骨と付くのかは生科学的には謎でした。しかし、私たちは、世界で初めて六十年ぶりに骨と結合するタンパク質を発見しました。また、世界で初めて今までの発想では思いつかない骨を造るための、生体に吸収されない人工膜を開発しております。これらの研究は、直接私の患者さんたちに関係することでしたので、とにかく信念をもって取り組みました。もちろん日中は、自分の仕事もありますので、一日の時間をどの様に使うかが重要でした。5年間(通常は3年間です)の学生生活で一番困ったことは、パソコン操作です。今まで、メールや学会での発表用のパワーポイントなどは、すべて他の人にしていただいていましたので、いざ全て自分でしなくてはならなくなり研究以上に苦労しました。このことが最終の論文仕上げに大変影響があり、もう一年延びるところでした。しかし、多くの方々のご指導とご協力のおかげで無事、東北大学より開業医として初めて医工学博士の学位をいただきましたことに感謝すると共に、誇りに思います。また、診療と共に研究での成果を少しでも今後の歯科治療に取り入れられ、患者さんの生活向上に貢献できることを望んでいます。古澤利武(ふるさわとしたけ)1957年生まれ出身学部/東北大学大学院医工学研究科博士後期課程修了現職/古澤歯科医院院長3536