ブックタイトル東北大学環境報告書2014

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概要

東北大学環境報告書2014

EnvironmentalManagementReport 2014,Tohoku University立地する干潟では、津波の時に一時的に水位は高くなったものの底土の撹乱は起こらず、水が引いた後は震災前のままの形で干潟が出現しました。こうした場所ではアマモ場も健在で、底生動物も多くの種類が生息していました(微撹乱)。震災後半年までの調査によれば、大撹乱を受けた干潟で震災に耐えて生き残っていた底生動物の種数は20%以下でしたが、中撹乱のところでは24~56%、微撹乱のところでは55~66%でした(鈴木2013,Urabe et al. 2013)。干潟は生物生産性の極めて高い所であり、砂や泥の底土には多種類の生きものがすみ込んでいます。水質浄化機能を始め、様々な魚の稚魚にとっては保育所、渡り鳥にとっては渡りを成功させる採餌・休憩場所の役割を果たしています。大震災で大きな影響を受けた干潟が、このような本来備えている役割を再び発揮するには、食物連鎖の基盤を担っている底生動物群集の回復が必須です。今後、被災した干潟が再生し、あるいは別の場所に新たに干潟ができるときに、そこに容易に底生生物が移入・定着できるよう、供給元となるホットスポット、すなわち現在でも多様な底生生物が生息しているハビタット(生息場所)を十分に確保しておく必要があります。また、底生動物のほとんどは幼生期に浮遊生活を送るので、幼生による分散・回帰が妨げられないように海域の連続性を確保することも大切です。そのために、海水の汚染や貧酸素化を抑える努力が必要なのは言うまでもありません。大震災から3年を過ぎた現在、底生動物は順調に回復してきており、多くの干潟で、出現種数は震災前と同レベルになってきています。しかし、生息密度はまだ低いままですし、群集組成が震災前とは部分的に異なっているなどその回復は完全とは言えません。一方で、海辺の生物の生息環境に対する配慮がなされないままに復興工事が進められているところもあるのが現状です。多くの機能や役割を備えた干潟生態系が、堤防や護岸壁の修復や新設、あるいは地盤沈下した沿岸域のかさ上げ工事などによって失われないよう知恵を出し努力する事が大切です。干潟も含めた沿岸域の自然環境が提供してくれる様々な海の恵み(生態系サービス)を次世代が持続的に利用できるようにしていくためには、地域の豊かさにつながる生態系の回復力を助け、自然と社会が共生する復興のあり方を考えなければなりません。底生動物群集の多様性の回復は、干潟の健全性のバロメーターにもなることから、我々は被災した各地の干潟で底生動物のモニタリング調査を実施しています。調査手法のひとつとし各論3環境関連研究の推進て、市民参加型の生物調査法を取り入れ、ボランティアの協力を得て、長期にわたって調査を継続する仕組みを組立てているところです。鈴木孝男(2013)渚の生態系サ-ビスを取り戻す-津波で被災した干潟生態系の現状とその回復・再生.森林環境2013:144-152.Urabe, J., T. Suzuki, T.Nishita, W. Makino (2013) Immediate Ecological impacts of the 2011 Tohoku Earthquake Tsunamion intertidal flat communities. PLoS ONE 8(5): e62779. doi10.1371.49