ブックタイトル東北大学 アニュアルレビュー2015

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概要

東北大学 アニュアルレビュー2015

地域貢献: SOCIAL CONTRIBUTION地域貢献: SOCIAL CONTRIBUTION3「東北法学会」──法そして法律家と地域とのつながり──渡辺達徳第三回国連防災世界会議を終えて0原信義04東北大学法学部と東北法学会▼「東北法学会」は、東北地方の大学等に勤務する法学・政治学の教員、裁判官・検察官・弁護士という法律実務家が主たる会員となり、法学・政治学に関する研究、研究者と実務家との交流・親睦をはかることを目的として設立されたもので、東北大学川内キャンパスにある東北大学法学部内に事務所が置かれています。その主たる活動内容は、通例一年に一回開催される大会における研究報告と講演(図1)、そして、大会の記録その他の記事から成る「東北法学会々報」(図2)の刊行です。20153月14日~18日、第三回国連防災世界会議が仙台市で開催されました。国連加盟国193のうち187の国が参加し、本体会議に6,500人以上、関連行事を含めると延べ15万人の参加者があり、日本では過去最大級の国連関係の国際会議となりました。東北大学は仙台開催実行委員会の主要メンバーとして、会議の準備から関連事業の実施に至るまで、仙台市に全面的に協力するとともに、自らも多数のイベントを企画・実施しました。任は重いですが、SENDAIが防災分野における世界共通用語になります。東北大学の取組み▼本学にとっては、「災害復興新生研究機構」の下で「東北復興・日本新生の先導」を目指して行ってきた研究・教育・社会貢献の成果を世界に向けて発信する絶好の機会となりました。大学全体で取り組んでいる8つの重点プロジェクトはもちろんのこと、教職員が自主的に取り組む復興アクション100+も加わり、全部で34のシンポジウム・セミナーを開催し、約4,500人の方にご参加いただきました。また、24のブースおよびポスター展示を行い、約4,000人の方に訪れていただきました。することが発表されました。国連開発計画(UNDP)と協力して、各国における災害統計データを蓄積し、その分析結果を各国の防災政策・開発政策の立案に役立てます。UNDPのヘレン・クラーク総裁は、「リスクを理解しなければ、持続可能な発展は不可能」であると述べ、リスクの理解に役立つ科学的データを蓄積・解析・提供する本センターの役割に大きな期待を寄せられました。東北法学会と地域とのつながり▼「東北法学会」は、市民の方々に広く開かれた学会ではなく、その意味では、「地域と大学」というこのコーナーでご紹介するにふさわしいものか、ためらわれるところもあります。しかし、法も政治も、私たちひとりひとりの幸福追求及び社会の発展を支えるための制度ですから、「東北法学会」において報告・講演のテーマとして選ばれるのは、市民の方々にとっても身近な話題ばかりなのです。図1 2014年度大会の様子最近の2年間を振り返ってみると、東日本大震災後の市民生活の復旧・復興を支えるテーマが取り上げられ、議論されてきました。2013年の大会では、仙台弁護士会所属の弁護士さんにより、東日本大震災が原因となって起こった法的紛争について、弁護士である仲裁人が安い費用で迅速に解決に取り組んできた活動の記録が報告され、大規模な自然災害が起きたときに被災地の法律家が果たすべき役割について、参加者が議論を交わしました。この報告の中では、仙台弁護士会が、東日本大震災の10日後から、フリーダイヤルによる無料法律相談を開始したことなど、被災者に寄り添う弁護士さんの活動も紹介されました。また、2014年の大会では、東日本大震災の際に住民の生命と安全を守るために職務を全うし、自らの命を落とした公務員の遺族に対する補償をめぐる法的問題が取り上げられました。この問題は、公務員が自らの生命にかかわる公務を拒否することができるのか、という重い問いかけを含むものでもありました。これらの大会における報告のあらましは、「東北法学会々報」として刊行される小冊子により紹介されており、2000年刊行の第18号からは、その内容の全部または一部を、東北大学大学院法学研究科のウェブサイト(http://www.law.tohoku.ac.jp/research/thg/publications/)からご覧いただくことができるようになっています。裁判官「仙台の坂道をゆく」▼「東北法学会々報」には、意外な「お楽しみ記事」もあります。2014年6月に刊行された第32号には、「仙台の坂道をゆく」という随想が掲載されています。これを著されたのは当時の仙台地方裁判所の裁判官で、この随想文は、ご自身の坂道散策という趣味を活かして、「仙台七坂」を簡潔に、そしてツボを押さえて紹介した紀行文となっています。仙台という土地と法律家とのほほえましい接点です。この随想も、上記のウェブサイトからご覧いただけることを付言しておきましょう。会議の目的と成果▼本会議は、国際社会における防災の戦略目標と行動計画を議論する場であり、第一回は1994年に横浜市で、第二回は2005年に神戸市で開催されました。神戸の会議では、2015年までの世界の取組指針として「兵庫行動枠組(HFA)」が策定され、このHFAは防災の分野では誰もが知るキーワードとなりました。今回の会議では、HFAの後継として、災害による死亡者数を大幅削減するなど、七つの具体的目標を盛り込んだ「仙台防災枠組2015-2030」と、その実行を求める「仙台宣言」が採択されました。ワルストロム国連事務総長特別代表(防災担当)によれば、「惨禍から懸命に立ち上がろうとしている被災地の人々に対する敬意を込めて、SENDAIの名を冠した」とのことです。責「災害統計グローバルセンター」を設置▼全学企画の「東北大学復興シンポジウム東北大学からのメッセージ~震災の教訓を未来に紡ぐ~」では、潘基文(パンギムン)国連事務総長が約1,200名の聴衆を前に特別講演をされました。被災地に向けたエールとともに、本学の取組みに対する賞賛のお言葉を頂き、感激いたしました。また、本学の災害科学国際研究所に「災害統計グローバルセンター」を設置創造的復興を目指して▼東北大学は、これからも被災地が抱える様々な解題の解決のために継続して取り組むとともに、地域の特色や資源を生かし、新しい東北を創生するための研究や人材育成を推進してまいります。「仙台防災枠組」に盛り込まれたビルド・バック・ベターの実践です。このような「創造的復興」に向けた活動の成果は、やがてグローバルな協力体制の下に国際社会における貢献にも繋がっていくはずです。「創造的復興」の道は東北から全国へ、そして世界へと続きます。原信義(はらのぶよし)■1951年生まれ■現職:理事(震災復興推進担当)■関連ホームページ:http://www.idrrr.tohoku.ac.jp/渡辺達徳(わたなべたつのり)■1955年生まれ■現職:東北大学大学院法学研究科教授■専門:民法、消費者私法■関連HP:http://www.law.tohoku.ac.jp/図2発行している「東北法学会々報」「東北大学復興シンポジウム」における潘基文国連事務総長の講演「災害統計グローバルセンター」設置発表記者会見。左から、今村文彦災害科学国際研究所所長、里見進東北大学総長、ヘレン・クラーク国際連合開発計画(UNDP)総裁、奥山恵美子仙台市長、ジョー・ショウヤーUNDP気候変動・災害リスク削減部長、シャムシャド・アクタール国連アジア太平洋経済社会委員会(ESCAP)事務局長。Tohoku University ANNUAL REVIEW 2015page: 30Tohoku University ANNUAL REVIEW 2015page: 31