ブックタイトル2016読書の年輪 -研究と講義への案内-

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概要

2016読書の年輪 -研究と講義への案内-

Institute of Liberal Arts and Sciences,Tohoku University吉野博YOSHINO, Hiroshi読書の思い出吉野博YOSHINO, Hiroshi総長特命教授、東北大学名誉教授、工学博士専門分野:建築環境工学担当基礎ゼミ:「住いのエネルギー消費構造を理解して温暖化防止策を探る」科基幹科目:「自然と環境:住いと人と環境」目展開ゼミ:「環境とエネルギー問題」研究室:国際交流棟2階203号室E-mail:yoshino@sabine.pln.arch.tohoku.ac.jp筆者の専門は建築環境工学と呼ぶ学問領域である。目的の第一は、人が快適・健康に過ごすために建物内の環境はどうあるべきかを明らかにする、第二は、望ましい環境を少ないエネルギーで実現するための建物や設備の設計理論や方法を示す、第三は、建物や設備の適切な使い方、運用の仕方に関する方法を示すことである。これらの研究成果は、建物の設計・建設・運用等の実務に際して基礎的な資料として利用されている。その中で筆者のライフワークは、住宅における居住環境性能とエネルギー消費であり、キーワードで示せば、健康・快適、省エネルギー計画、自然エネルギー利用、気密性能と換気、シックハウス防除、低炭素社会の実現といったところである。この分野に進むきっかけは、建築学科の4年の時に住宅のエネルギー消費と環境に関する卒業研究に関わったことである。学生時代によく言われたことは、建築は様々な学問の応用として結実するものであるから、あらゆることに興味を持つこと、様々な分野の本を読むことであった。建築には様々な用途があり、利用する人も様々である。また要求条件や制約条件も多々あるため、あらゆることが建築の設計に関係があるという理屈である。大学時代は空手道部に属し、それに熱中していたこともあり、色々な本は読んでいたが印象に残ったことはあまりなく、夏目漱石や司馬遼太郎の一連の小説を読んだことぐらいである。大学の時よりも中学・高校の時代に熱中して本を読んだという記憶がある。亡くなった叔父が読書家であったことから、その叔父に薦められて倉田百三の「出家とその弟子」を読んだ。これがきっかけとなって、一連の作品「愛と認識との出発」、「超克」、「絶対的生活」など、難解な文章ではあったが何度も読んだ記憶がある。また、関連して、武者小路実篤の「お目出たき人」、「幸福者」、「友情」などの作品を読んだ。これらの本はその後の人生観に大きな影響を与えた。また武者小路の「第三の隠者の運命」を読んでからは、心身ともに強くならなければならないという思いが強くなり、そのことがきっかけで大学時代に空手道部に入ることになった。さて、大学の学部教育の目的の一つは、「与えられた課題に対して自ら調査し考えて、その課題に対する考えをまとめる」、それができる能力を養うということである。従って、常日頃から様々な方面に情報網を張っておくとともに、論理的に思考できる素養を身につけていくことである。そのためには読書に勝る効果的な方法はない。今回推薦した6冊の図書は、建築や環境に関連する教養書である。土木工学や建築学方面に進学する学生以外にも是非、勧めたいものである。14