ブックタイトル2016読書の年輪 -研究と講義への案内-

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概要

2016読書の年輪 -研究と講義への案内-

エドワード・アレン著建物はどのように働いているか安藤正雄/越知卓英/小松幸夫/深尾精一共著、鹿島出版会、1982年本書は、建築環境工学の教科書の副読本として長年推薦してきたものであるが、建築環境の問題だけでなく構造、防火、構法なども含まれており、建築を学ぶ学生のみならず、建築に関心を持つ一般の方にも是非、薦めたい書籍である。講義では、健康で快適な環境を少ないエネルギー消費で実現するための設計の基礎となる事項を学ぶ。建築環境工学の一般的な教科書は、多くの数式で物理現象や評価手法が記述されているため、学生にとっては興味が沸きにくい科目の一つとなっている。本の冒頭には「ちょうど人体の成り立ちと働きを要領よくまとめた生理学の入門書のように、建物の働きと仕組みに関する広範なことがらを一巻にまとめたわかりやすい絵入りの本がないものかどうか」と筆者の執筆の動機が記されている。まさにその通り、わかりやすいイラストが随所に示されており、イラストそのものを楽しめるばかりでなく、建物の構造、設備の構成、エネルギーの流れ、物理量と感覚量の関係、物理的な現象が直感的に理解できる。特に、冷房設備の複雑な原理や、熱伝導や熱容量、輻射の物理的な意味などを示すイラストは見事である。フロレンス・ナイチンゲール著看護覚え書―看護であること看護でないこと湯槇ます/薄井坦子/小玉香津子/田村真/小南吉彦訳、現代社、2011年ナイチンゲールは1820年にイギリスの裕福な家庭に生まれた。通常であれば幸せな一生を終える環境にあったが、自分の使命は病院の患者の世話をすることだと悟り、26歳頃から病院や衛生についての勉強を始め、30歳頃から病院で看護の仕事に就くことになった。本書は、戦場を含めた多くの看護の現場における経験を踏まえて1860年にまとめられ看護学のバイブルとして読み継がれている。現代とは比較にならないほど非衛生的な環境であったであろうが、病気の回復のためには室内の環境をいかに清潔に維持するか、即ち「住居の健康」が重要であり、十分な換気と保温、音の静かさ、適切な採光などの必要性を説いている。これらの考え方は現代の室内環境のあり方の原点とも言うべき内容である。また、環境問題に留まらず、患者の気持ちを考えた対応の仕方、接し方についても触れられており、日常的に人間関係を良好に保つための基本的な作法に通じるものがある。41歳からは歩行困難となり、亡くなる90歳までは殆ど寝室のソファーで作業を行い、陸軍の病院施設のあり方などに関して多くの指導・助言を行い、150篇の報告書・書籍をまとめている。15