ブックタイトル2016読書の年輪 -研究と講義への案内-

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概要

2016読書の年輪 -研究と講義への案内-

工藤昭彦KUDO, Akihiko平野克己著経済大陸アフリカ―資源、食糧問題から開発政策まで―中公新書、2013年『経済大陸アフリカ』という書籍のタイトルに違和感を覚える人も多いのではないか。アフリカといえば貧困と飢餓に喘ぐ辺境の地というイメージが強いからだ。本書が注視する急速な経済成長は、こうしたアフリカの固定観念を一掃する。成長の牽引役は中国。その証拠に石油など豊富な天然資源を求めてやみくもにアフリカに攻勢をかけ、各国でのプレゼンスを増している。いまやアフリカの輸出入ともに、圧倒的にトップの座を占めているのは中国だ。信じ難いことにアフリカの賃金は中国より高い。このため進出した中国企業にとって安価で使い勝手がいいのは本国から連れてくる労働力。経済が成長しても現地の雇用が増えないのはそのためだ。このままだと資源も雇用も中国に奪われてしまいかねない。著者によれば、アフリカの賃金が高いのは輸入依存度を高める食糧価格の上昇で都市の生活コストが上がったためだ。背景にあるのは国内農業の低迷。だからこそジニ係数が著しく高いアフリカが格差を圧縮し、世界の食料安全保障を脅かす震源地とならないためにも、農業革新に的を絞った内外の投資が必要だと力説する。割愛した開発援助や企業行動分析を含めて、全編が豊富なデータに裏打ちされているだけに説得力がある。加藤尚武著新・環境倫理学のすすめ丸善ライブラリー373、丸善出版、2005年人間の行動規範を論じる学問という意味で、環境倫理学も古来からの倫理学の範疇に入る。それが独自の学問領域として広く市民権を得るようになったのは、環境問題が深刻化したからだろう。1972年の「国連人間環境会議」(ストックホルム会議)前後から、欧米で環境倫理学という言葉が使われるようになった。92年の「環境と開発に関する国連環境会議」(リオ・サミット)以降、環境倫理学は扱う対象や内容を拡大しながら世界に広まった。いまや「エコしよう」、「エコしている」といった軽いノリで語られるほど、環境倫理学は身近なものとなった。功績の一端を担ったのは、加藤氏が20年前に出版した『環境倫理学のすすめ』だろう。その続編にあたるのが本書だ。前書は京都議定書のような国際協力体制が生まれることを期待しながら書いたという。今度の本書には、同議定書が誕生と同時に傷だらけになる中、学生諸君のような若い世代への著者の願いや期待が込められている。終章で、「戦争による環境破壊」を警告しているのも、本書ならではだ。「世界の有限性」、「世代間倫理」、「生物種の生存権」など環境倫理学の三原則は、20年前から少しもぶれていない。25