ブックタイトル2016読書の年輪 -研究と講義への案内-

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概要

2016読書の年輪 -研究と講義への案内-

Institute of Liberal Arts and Sciences,Tohoku University森田康夫MORITA, Yasuo学問とは何か?―大学は何を目指すべきか―森田康夫MORITA, Yasuo総長特命教授、東北大学名誉教授、理学博士専門分野:数学(整数論)、数学教育(少子化が教育に与える影響の研究)、入学試験担当基礎ゼミ:「学校教育の在り方と入学試験の功罪を考える」科基幹科目:「科学と情報:数学と人間?数学を俯瞰する」目総合科目:「教育と科学技術」研究室:国際交流棟2階201号室E-mail:ysmorita@m.tohoku.ac.jp私は第二次世界大戦が終わった1945年に生まれ、高度成長期の1970年に数学の研究者として出発し、整数論の色々な分野で研究をしてきた。しかし東北大学の教授として入学試験と交通問題を担当することになり、数学教育や入学試験のことも研究する様になった。このため、それまでは新しい数学の定理を探すことに私は熱中していたが、現実世界の中で入学試験や教育をどのようにして改善するかを考える様になり、真理を知りたいという「思い」重視から、どの様な結果となったかという「結果」重視に価値観を変えた。私は教育の任務は若者の能力を開花させ、有能な人材として社会に送り出すことにあると考えている。教育は人材育成を行うサービス産業であり、お客様である生徒や学生の幸せと、社会発展の基盤となる有能な人材を育成するため、できる限りの努力をすべきものと私は考えている。しかし、日本社会では少子化の中で大学の学生定員が増加しており、今まで若者を学習させる主たる動機であった入学試験に受かることが容易になり、誰でもどこかの大学に入学できるという「大学全入」が実現している。そのため、ゆとり教育の影響もあり、今までより少ない知識と能力を持った若者が大学に入学している。私は数学という結果が見やすい教科を担当していたため、日本がこの様な状態になることを15年余り前に気づき、友人達と共に入学試験や数学教育の改善のために努力を続けてきた。私達や私達の直ぐ下の団塊の世代は戦後の貧しさを憶えており、生きるために必死になり働いてきた。その結果、1980年頃には日本は欧米に追いつき、「Japan as No.1」とまで言われる様になった。しかし日本人は慢心し、バブルを起こし、さらにその処理にも失敗し、現在に至っている。私は、今日本は分かれ道に面していると思っている。そのため、「日本人はこれからの世界でどのようなことを目指すべきか?」を考えることが必要であると考えており、大学人は、「学問とは何か?」、「日本の大学は何を目指すべきか?」について再考すべきだと思っている。私は入学試験、数学史、および科学技術をテーマとした授業を行っており、授業を行いながら以上の様なことを考えている。以下でお薦めする本は、この様な視点から選ばれたものである。26