ブックタイトル2016読書の年輪 -研究と講義への案内-

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概要

2016読書の年輪 -研究と講義への案内-

スティーヴン・オッペンハイマー著人類の足跡10万年全史仲村明子訳、草思社、2007年人類は約700万年前にアフリカで類人猿から誕生し、その後ユーラシア大陸に広がった。私達ホモ・サピエンスがどのようにして古いタイプの人類(旧人)から進化したかについては、アフリカで進化して全世界に広がったという説と、世界各地で進化したという二つの説があり、長年議論になってきた。しかし、最近ミトコンドリアの持つD N Aなどを使って過去を解析する方法が発達し、ホモ・サピエンスはアフリカで進化したとの説が有力となっている。この本では、現代人が持つミトコンドリアやY染色体のDNAに基づき人類史を詳しく分析し、ホモ・サピエンスは旧人から十数万年前にアフリカで進化し、氷河期による海水の低下に助けられ、約10万年前に(スエズ地峡ではなく)紅海の南端からアラビア半島へ渡り、さらに海沿いにアジア大陸に渡り、約8万年位前に東南アジアを介して東アジアとオーストラリアへ、約5万年位前に中東を介してヨーロッパに、さらにベーリング海峡を経て約2万年前にアメリカ大陸に広がったと主張している。最近の生命科学の発展や人類の起源などに興味を持つ人に勧めたい本である。E・T・ベル著数学をつくった人びとⅠ、Ⅱ、Ⅲ田中勇/銀林浩訳、ハヤカワ文庫、2003年数学は古代文明と共に誕生し、古代ギリシャにおいて数学の学問としての体系ができた。その後、ギリシャの数学はインド・アラビアを介してルネッサンス期のヨーロッパに伝わり、デカルトやニュートンの研究により、「科学を語る言葉」としての数学の地位が確定した。この本では、この様な歴史を数学者の逸話を紹介しながら記述している。この本は1937年に初版が出た数学史の古典であり、日本語訳は1997年に出版され、2003年に文庫版が出版された。この本が書かれた当時には20世紀の数学の評価が確定していなかったため、20世紀の数学については余り書かれていない。この本のⅠでは古代から18世紀までの数学を紹介し、Ⅱでは19世紀前半の数学を紹介し、Ⅲでは19世紀前半から20世紀初めまでの数学を紹介している。この本について、森毅氏は「微分積分学が何をしたくて考え出されたかわかったら、微積分発明の裏にニュートンとライプニッツのどろどろした先取権争いがあったと言ったら、俄然興味がわいてきませんか?」と言っている。科学や伝記に興味を持つ人に勧めたい本である。27