ブックタイトル2016読書の年輪 -研究と講義への案内-

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概要

2016読書の年輪 -研究と講義への案内-

森田康夫MORITA, Yasuoしたものである。石巻赤十字病院では被災者の医療の必要性を定めるトリアージを行い、限られた医療資源を効率的に配分し、地域内のすべての避難所の状況を巡回調査し衛生環境の確保につとめ、外部の機関と連携することにより必要な物資を確保し、多くの被災者の命を救った。本書を読むことにより、災害医療とは何かを知ることができる。また、本書は単なる読み物としても石巻赤十字病院著、由井りょう子文石巻赤十字病院の100日間―東日本大震災医師・看護師・病院職員たちの苦闘の記録―小学館、2011年石巻市では東北地方太平洋沖地震による大津波により約4000人が命を落とし、多くの人が家屋をなくした。石巻赤十字病院は、石巻の病院のなかで唯一津波の被害を逃れ、震災直後の医療の中心面白く、付属の看護専門学校が津波に襲われ、避難した学生が被災者の医療につくす様子や、逃げ遅れて津波に流された人が病院に運ばれ低体温症や肺炎の治療を受ける様子などが、緊迫感を持って伝わってくる。日本人は東日本大震災に際し冷静さを失わず、協力して犠牲者の数を抑え世界の賞賛を受けたが、本書によりそのことが確認できる。となった。この本はそのときの同病院の活動を記録逃げられなかった患者は津波にのみ込まれた。陸前高田市では3000戸以上が全壊し、2000人近くが死亡または行方不明となった。宮古市田老町では、高さ10メートルの防潮堤を作って津波に備えていたが、津波は防潮堤を乗り越え住民を襲った。佐野氏はこれらの町の被災状況を生々しく描写している。また、佐野氏は4月後半に原発事故で立ち入り禁止となっている楢葉町、富岡町、浪江町などを訪れ、死の町となった現地の状態を描写し、なぜ佐野眞一著津波と原発講談社文庫、2014年(2011年)佐野眞一氏はノンフィクション作家として定評のある人だが、東日本大震災直後の3月18日から津波で被災した地域の取材を始めた。東北電力の事業範囲である福島の双葉郡に東京電力福島第一原子力発電所が作られたのかを説明している。本書を読むことにより、福島第一原発が作られ深刻な事故を引き起こした社会的背景を知ることができる。本書は、「津波と原発」について非常に良く書かれた本である。佐野氏が訪れた宮城県南三陸町では、志津川病院の建物の4階部分までが津波に襲われ、屋上まで29