ブックタイトル2016読書の年輪 -研究と講義への案内-

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概要

2016読書の年輪 -研究と講義への案内-

Institute of Liberal Arts and Sciences,Tohoku University福西浩FUKUNISHI, Hiroshi退職自分の夢を社会の夢に―日本と世界の未来について考えよう―福西浩FUKUNISHI, Hiroshi総長特命教授(2012年度~2013年度。2014年3月末退職)、東北大学名誉教授(大学院理学研究科)、理学博士専門分野:超高層物理学、宇宙空間物理学※2013年度担当基礎ゼミ:「未知への挑戦-南極観測から学ぶ」/「宇宙天気予報に挑戦しよう」科展開ゼミ:「惑星探査技術を学ぶ」目基幹科目:「雷放電から探る地球環境変動」総合科目:「急成長する中国の科学技術と経済」/「オーロラから探る宇宙環境」私が中学1年生の1957年に世界初の人工衛星スプートニク1号の打ち上げがあり、南極に昭和基地が開設されるという出来事があった。これに刺激されて南極で宇宙空間の現象であるオーロラを研究することが自分の夢になった。東京大学に入学し、第1次南極観測隊長を務めた永田武教授の研究室で研究を始め、夢の実現に近づいた。そして大学院博士課程の時に南極観測隊に参加し、昭和基地でオーロラの越冬観測を行った。この観測結果を基にした博士論文が世界的に認められ、米国のベル研究所に2年間留学した。その後国立極地研究所に入り、南極観測事業の推進役として3度南極観測隊に参加し、越冬隊長や夏隊長も務めた。1986年に東北大学理学研究科に移り、南極・北極でのオーロラ研究に加えて、人工衛星を用いた宇宙空間と惑星の研究を新たに始めた。研究室では多数の大学院生がさまざまな研究に挑戦し、国際的にインパクトのある素晴らしい研究成果を上げて巣立って行った。こうした経験から、大学は学生たちの夢を実現する場でなければならないと確信するようになった。東北大学が目指す「研究第一主義」による教育も、学生と教員が一体となった世界レベルの研究チームが創り出されることが前提だ。大学院の学生たちはこうした研究チームに参加することによって新しい研究領域に挑戦する意欲が掻き立てられる。しかし学部の学生たちは研究チームの一員となる前の段階なので、別のやり方で知的好奇心を高める必要がある。高校までの学びは受験勉強中心なので、いかに効率的に学習するかに焦点を当て、文系・理系別の受験科目に絞った学習が当たり前になっている。しかし現在のグローバル化した社会で活躍するには特定の分野の知識だけでは全く役に立たず、分野横断的なコラボレーション能力やコミュニケーション能力が必須となる。それを身につけるにはまず教養教育で知的好奇心を高め、いろいろな分野に興味をもち、視野を広げていく必要がある。インターネットは広範囲な知識を瞬時に得るという点では優れているが、視野を広げるという点では読書の方がはるかに優れている。一冊の本をじっくり読むことによって、著者の視点や考え方が分かり、「自分だったらどう考えるか」と思索を巡らすことができる。大学の学びの最初の段階で最も重要なことは他人の考えの受け売りではなく、自分流の考え方を確立していくことだ。ここで紹介する6冊の本をとおして自分の夢を社会の夢に高める道について考えてみよう。(2014年2月)34