ブックタイトル2016読書の年輪 -研究と講義への案内-

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概要

2016読書の年輪 -研究と講義への案内-

福西浩FUKUNISHI, Hiroshiはフランス現代思想だが、武道家でもあり、さまざまなジャンルの著書があり、ユニークな論理を展開している。本書で著者は、常にどこかに「世界の中心」を必要とする辺境の民が日本人であり、日本人固有の思考や行動は世界から見ればかなり特殊であると述べる。「世界標準からこんなに遅れている」と言われると日本人は必死になって「キャッチアップ」しようとするが、「国際社会はこれからどうあるべきか」内田樹著日本辺境論新潮新書、2009年明治維新、戦後復興と二度の奇跡をやり遂げた日本人が3.11東日本大震災後の日本新生をやり遂げるには、まず日本や世界が抱える諸問題について一人ひとりが自分の頭で考えていくことが必要だ。その際に参考になるのが本書である。著者の専門という種類の問題になるととたんに口をつぐんでしまう。しかし辺境人の優れた才能として著者は学びの効率がいいことを指摘する。学びは学んだ後になってはじめて学んだことの意味や有用性について語れるようになる。そこで外来の知見に無防備に身を拡げることが多くの利益をもたらすことを日本人は歴史的経験から習得しており、「学ぶ力」こそ日本の最大の国力であると著者は主張する。る日中共同声明が出され、友好関係を発展させる基盤はでき上がっている。私は2007年に日本学術振興会が開設した北京センターの初代所長として4年間北京に滞在し、日中学術交流を推進する仕事をしてきたが、教育と科学技術に関する両国の交流も急速に発展している。著者のキッシンジャー博士は1972年のニクソン訪中による米中国交回復の実現のために活躍した人物として歴史に名を残しているが、本書では世界ヘンリー・A・キッシンジャー著キッシンジャー回想録中国(上・下)塚越敏彦/松下文男/横山司/岩瀬彰/中川潔訳、岩波書店、2012年尖閣諸島をめぐる対立によって日中関係の将来が心配されているが、現在日本の貿易相手国は輸出入とも中国が全体の20%ほどを占めて第1位になっており、日中はすでに一体化した経済圏を形成している。また2008年に戦略的互恵関係の推進に関すの人々をあっと言わせたこの出来事が「地政学的な発想」と中国の歴史と中国人の考え方を深く理解することによって初めて実現したことを詳しく解説してくれる。私たちは表面的な米中対立に目を奪われがちであるが、キッシンジャー博士は本書の中で、「これからの米中関係を適切に表現すれば、それは協力関係というよりも『相互進化』であろう」と述べている。『相互進化』はこれからの日中関係においても強く求められる。37