ブックタイトル2016読書の年輪 -研究と講義への案内-

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概要

2016読書の年輪 -研究と講義への案内-

岩波新書編集部編英語とわたし岩波新書、2000年(品切重版未定)英語の参考書は無数にあり、さまざまな角度から英語に関して論じた書籍も数え切れないほど、私たちにとって英語は大きな関心事である。英語を使えるようになりたいと多くの人が願いながら、挫折を味わうというのも現実である。本書は、各界で活躍している23人の体験的英語論である。政治家、学者、ジャーナリスト、ビジネスマン、スポーツ選手、音楽家など、さまざまな分野の人が仕事をする中で英語とどのように関わって(あるいは格闘して)きたかを淡々と話している。この中にはもちろん英語の達人もいるのだが、英語を専門的に勉強してきた人はいない。みな、日本の学校で教育を受け、あくまでもそれぞれの仕事のなかで英語を勉強してそれを使っている人たちである。また、英語をどのように学びどのように使っているかだけでなく、優れた仕事をする人たちが国際共通語である英語を(あるいはそれを使うことを)どう考えているのかもわかる。皆が皆、英語を使うことを無批判に肯定しているわけではない。なかには皆が英語に向いている現状に少し立ち止まってみることも必要だという人もいて、面白く参考になる。中村保男著翻訳の秘訣:理論と実践新潮選書、1982年「翻訳」に関して書かれたものの中には達人による自慢話や苦労話、失敗談になっているものが少なくないが、本書はそのようなところは一切なく、副題からわかるように、翻訳の本質について述べるとともに、翻訳の実際の作業をできるだけ体系的に整理し、翻訳を通して日本語の表現力・表現力を身に付ける方向を目指している。ふだん外国語の学習をしている学生の皆さんにとっては、「翻訳」とは極めて特殊な専門的な作業であると思うかもしれない。実際そういう面はあるが、本書は、中学校・高校で英語の基礎を学んだ人の語学的な知識を前提として、英文和訳・英文解釈を卒業して翻訳にいたる道筋を教えてくれる。つまり、外国語学習の一つの行き着く先が優れた翻訳であるという視点から、著者の示す道筋は、見えないところで言語学的な基盤と根拠に基づいている。たとえば、著者は「日本語・英語間の語順の違いは文法の違いによるものでいたしかたがないが、『節』順は両者ともに基本的に変わりがない」というが、これは機能言語学の基礎でもある。自分の持つ外国語力をさらに伸ばしたい方には一読をお勧めする。39