ブックタイトル2016読書の年輪 -研究と講義への案内-

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概要

2016読書の年輪 -研究と講義への案内-

福地肇FUKUCHI, Hajime定するのかによって、弱い仮説と強い仮説がある。こういう議論をするときによく出される例や話題は、日本の幼児は太陽を書かせると赤いクレヨンを使うが、黄色を使う国もある、とか、ピーターパンの挿絵に出てくるワニは緑色である、という他愛のないものもある。本書の中心的内容となっている日本語の呼称体系は、ことばがいかに日本人の人間関係の形成に関わっているかを知るうえで考えさせられる。親は鈴木孝夫著ことばと文化岩波新書、1973年言葉が違えば文化も違う、というのはいわばあたりまえのことで、決してめずらしい見かたではないが、どのように、と訊かれると困ることがある。ことばが人間の思考や文化の形態を決める、というのが言語相対論という言語観であるが、どの程度決子を固有名詞や代名詞で呼び、子は親をお父さん・お母さんと普通名詞で呼ぶ、子に対して親は自分のことを普通名詞で呼び、子は代名詞を用いる。小学校低学年担当の先生も自分を普通名詞で指すことがある。また、職場の上司は部下を固有名詞で呼ぶが、部下は上司を課長などの普通名詞で呼ぶ、など、いわば整然とした体系をなしていると思われる。ことばが文化的基盤の形成にどうかかわっているか、その様子がよくわかる。の点では気楽に読めるとも言える。著者は高名な万葉学者であり、縄文の時代にさかのぼって現在までの日本文化を特徴づける話題を拾って論じているが、それを通して日本文化と他の文化のパターンの違いに目を向けているように思う。たとえば、日本の建物をふくめた構築物は平面的に広がるパターンがあるのに対し、西洋のそれは垂直に伸びようとするパターンがある、という指摘がある。代表的な建築、たとえば野山を借景とする中西進著日本の文化構造岩波書店、2010年タイトル通りの内容であり、タイトル通りの堅い本である。今回紹介した6冊の本のなかでは一番高度な内容になると思うが、それほど難解というわけではない。講演や学術誌に載せた論文を収集編集寝殿造りと、何百年もかけて完成されるゴシックの大聖堂を思い浮かべればすぐに実感することであるが、無秩序に広がる日本の団地と、2本の道路が交差するだけで出来上がり番地の付け方まで決まるアメリカ西部の小さな町にまで話題が広がる。英語教師の私は、ここから、節を並列させたがる日本語と節を積み上げたがる英語の文(節)の構成パターンの違いを想う。したもので、体系立てて書かれたものではなく、そ41