ブックタイトル2016読書の年輪 -研究と講義への案内-

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概要

2016読書の年輪 -研究と講義への案内-

Institute of Liberal Arts and Sciences,Tohoku University前忠彦MAE, Tadahiko退職若い頃の洋書との出会い前忠彦MAE, Tadahiko総長特命教授(2011年度~2013年度。2014年3月末退職)、東北大学名誉教授(大学院農学研究科)、農学博士専門分野:植物栄養生理学(作物の生産性に関わる生理・生化学、栄養学)担※2013年当科基礎ゼミ:「“植物の独立栄養性”を検証する」/「ヒトの暮し・文化と植物の多様な関わり」目基幹科目:「地球の命支える“光合成”をひもとく」総合科目:「植物面白考―巧みな生存戦略と私達の暮し」私はこれまで、植物栄養学、光合成、作物の生産性に関わる生理・生化学等について、研究と教育を行ってきた。ここでは、若いころの洋書との出会いについて述べたいと思う。学部時代、運動部で部活動中心の生活を送っていた私は4年で卒業して社会に出るには心もとなく、大学院に進んで勉学しなおすこととした。私が大学院生となった1960年代後半は生化学の研究が盛んで、私が所属した研究室では米国から帰国後間もない助教授を中心に、植物のアミノ酸に関する研究が活発に行われており、私の研究もその流れに沿うものであった。当時、最新の科学情報は、今のようにコンピューターを操作することで瞬時に手に入るのとは違い、発行後数ヶ月遅れでやっと届く外国雑誌に拠っていた。また、最近の情報を盛り込んだ広範な知見を得ようとする場合は、外国の教科書・専門書を手に入れるしかなかった。当時は、洋書を扱う本屋が定期的に研究室を訪れ注文をとっていく時代で、1ドル360円だったことに加え、定価に高額の郵送料、手数料が上乗せされてさらに高いものとなった。よって洋書は、院生にとって一大決心をしないと購入できないものであった。自分自身で初めて選んで購入した洋書は、『Dynamic Aspects ofBiochemistry』(Baldwin、1967)と題する青い表紙の本だった。それを初めて手にした時の気持ちの高ぶりが今でも懐かしい。研究者になることを決心した証しでもあった。大学院の修了を機に研究の幅を広げようと留学を決意した。自分の研究に行き詰まりを感じていたからである。幸い、オランダのワーゲニンゲンの植物生理中央研究所が博士研究員として迎えてくれることになった。オランダに渡り、街の本屋にいってみて驚いた。私の欲しい本が、信じられないような手頃な値段で並んでいた。滞在した街は小さいながらも、オランダ唯一の農科大学に加え国の農業研究機関のほとんどが集結しているという環境にあったため、店頭にはヨーロッパはもちろん、米国からの本も豊富にあった。うれしくて多くの本を購入した。おかげで留学期間中に植物科学の幅広い分野について多くを学ぶことができた。このときの経験が、私のその後の研究に対して広い視野と奥行きを与えてくれたと思っている。学生諸君に伝えたい。“ここぞと思うときに集中して学ぶ!それはのちにきっと大きな力となる”。以下には、私の担当している講義に関連した本を紹介する。(2014年2月)42