ブックタイトル2016読書の年輪 -研究と講義への案内-

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概要

2016読書の年輪 -研究と講義への案内-

園池公毅著光合成とはなにか―生命システムを支える力―ブルーバックスB-1612、講談社、2008年「光合成」と言えば「植物が光によって葉でデンプンをつくる反応」と小学校で習って以来、誰もが知っている。しかし、一歩踏み込んで「光合成のしくみは?」と正面きって問われると、多くのヒトが答えるのが怪しくなってしまう。地球環境の保全、食糧問題、エネルギー問題等が日常的に話題となる時勢である。これらの問題に「光合成」が深く関わるとなれば、さらにその理解を深めておくことが現代人にとって必要なことであろう。「光合成」を解説する本はいくつかあるが、そのほとんどは複数の著者によって書かれたものである。そのたぐいの本は、個々の項目の理解にはよいが項目間の関連を掴みにくいのが欠点である。光合成を全体的・網羅的に理解するのに手頃な本が案外少ない。そんな中で、文庫本サイズに「光合成」の重要な項目をバランスよくまとめ、読みやすい文体で一人の著者により書かれているのが本書である。全体を通し一貫した見方・考え方で説明されていて、入り組んだ生理反応の相互関係も理解しやすい。内容には最近の情報まで組み込まれており、光合成のほぼ全分野を網羅している。「光合成の全体像」をつかむのには適した本として推奨したい。東京大学光合成教育研究会編光合成の科学東京大学出版会、2007年理系ばかりでなく文系の学生や社会人にも興味を持って読んでもらえるように、との編集方針のもとにつくられた「光合成」の解説書である。また、関連事項についてちょっと調べたい時などに便利な本でもある。これまでの教科書は、光合成のメカニズムの解説を中心としたものが多かったが、本書は、そればかりではなく、近年のゲノム研究や遺伝子操作による新しい展開、環境や生態における光合成の意義、食糧との関わり、地球の歴史の中で光合成が果たしてきた役割など、光合成が生命科学・地球科学・社会に与える意義等についても幅広く解説している。内容は、1.光合成について考えてみよう、2.生命世界は光合成が作り上げた、3.多様な光合成生物の姿、4.光合成を支える細胞構造、5.光りをとらえて利用するしくみ、6.光合成膜で起きるはじめの反応、7.植物の体を作るための物質同化反応、8.光合成を助けるしくみ、9.葉緑体を機能させるための遺伝子、10.葉緑体をつくり増やすしくみ、11.環境に適応するしくみ、12.光合成生物の進化とゲノム科学、13.光合成は生命世界を作り続けるとなっている。幅広く光合成を学びたい人にお薦めの本である。44