ブックタイトル2016読書の年輪 -研究と講義への案内-

ページ
45/64

このページは 2016読書の年輪 -研究と講義への案内- の電子ブックに掲載されている45ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「ブックを開く」ボタンをクリックすると今すぐブックを開きます。

ActiBookアプリアイコンActiBookアプリをダウンロード(無償)

  • Available on the Appstore
  • Available on the Google play
  • Available on the Windows Store

概要

2016読書の年輪 -研究と講義への案内-

前忠彦MAE, Tadahikoデービッド・アッテンボロー著植物の私生活門田祐一監訳、手塚勲/小堀民恵訳、山と渓谷社、1998年自然をテーマにしたドキュメンタリーの第一人者として知られるデービッド・アッテンボローが、植物たちの秘密と謎に満ちた驚きの生活を、多くの美しい写真に分かり易い説明文を添えて、世に送り出した名著である。熱帯雨林、砂漠そして極地等で暮らす植物のさまざまな生き方を3年の月日を費やし追跡している。写真を見ただけでもわたし達の知らない植物のたくましさ、強さ、そのしたたかな生存戦略を知ることができる。全体は6章からなり、第1章では植物が子孫を増やし縄張りを拡大していく戦略、第2章では養分の多様な調達方法、第3章では花粉輸送の作戦、第4章では環境変化の中での生き残り戦略、第5章では植物とさまざまな生物とのパートナーシップ(共生)、そして第6章では南極、北極、高山、砂漠等の極限の世界でのサバイバル戦略が紹介されている。本書を読むと、太古からの様々な試練を乗り越えて適応・進化し今日まで命をつないできた植物のすごさが伝わってくる。植物に対するわたし達の一般的なイメージを大きく変えさせる内容と迫力をあわせ持った本である。一息入れたいときに手にとるにふさわしい楽しい本でもある。L・T・エヴァンス著100億人への食糧―人口増加と食糧生産の知恵―日向康吉訳、学会出版センター、2006年世界人口は、2011年11月に70億人を突破した。そしてその増加は今後も続き、2050年には100億人に達するとも予想されている。はたしてこの地球は、増え続ける世界人口を将来も養うことができるのだろうか?予想される食糧危機は、環境、生物多様性、教育、政治、経済等多くの問題と関わっており、世界が知恵を寄せ合って解決しなければならない問題である。本書は、農学者として世界によく知られるロイド・エヴァンスによるもので、1-10章では、人類の出現から今日までの世界人口の変遷と作物生産に関わる技術、科学の発展、食糧供給の関係を、時代を追って説明している。11章では、現在世界では何を食べているのか、そして著者の強い思いが込められた最終章では、100億人への食糧供給への具体的な戦略の提示とその実現に際しての問題点が述べられている。古今東西の人文科学から自然科学、社会科学と幅広い分野の膨大な情報をもとに、多様な観点からの論議が展開されている。その圧倒的な知識には驚嘆させられる。世界の農業史、農業技術史としても興味深い内容である。45