ブックタイトル2016読書の年輪 -研究と講義への案内-

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概要

2016読書の年輪 -研究と講義への案内-

Institute of Liberal Arts and Sciences,Tohoku University海老澤丕道EBISAWA, Hiromichi退職本との出会い―今、君たちだったら―海老澤丕道EBISAWA, Hiromichi総長特命教授(2008年度~2013年度。2014年3月末退職)、東北大学名誉教授(大学院情報科学研究科)、理学博士専門分野:理論物理学(超伝導/超流動、ナノ物理学)、ゆらぎ科学※2013年担当基礎ゼミ:「創造的な研究とは―ノーベル物理学賞に学ぶ」科展開ゼミ:「創造的な科学研究と人間社会」目基幹科目:「自然界の構造:おはなし物理学」総合科目:「科学と人間」高校生時代までに学校で得る知識はたいがい、皆一緒に同じことを同じところまで教わって得るものだ。入学試験問題をなるべく正しく解くために役立つ学力が身につくであろうが、それは結果を教わることが主であり、学問とは言えない。皆が同じことを教わるからではなく、結果を教わるからだ。大学での学びは記憶に取り込んだ広い知識ばかりではなく、身についた力が目標でなくてはならない。それも、既存の問題が解ける力ではない。私はそんなことを考えて、担当する授業科目の内容をより良くする努力を続けてきた。およそ半世紀前、諸君と同じように大学生としての一歩を踏み出した。1年半ほど考えた末、私は物理学者になる道をたどり始めた。その頃は物理学科自体が小さな学科で家族的であり、好きな分野と限らずに皆で専門書を一緒に勉強し、専門外の本を輪読する学部学生生活だった。その時代、つまり進路を決めるまでと研究生活が本格化するまでの過程で、それまで子供時代から読んできた本とは別の種類の本に知識を求めた。高校生時代までは文学書が主だったし、子供の時は子供向けの科学書も多く読んでいたのだった。私の「読書の年輪」はその学生時代のところの刻みが厚い。論文を読むことに追われる前のことである。読んだ本はその後の研究に役立ったというよりも研究をする私の心を作った本といえる。そう長い時間を読書に使う余裕もなかったので、多くは新書や文庫本であった。分厚いような本は題目に惹かれて買っても読み通せなかったように思う。教養教育院に所属して教養教育科目を担当することになって新たに授業内容を創ることになり、あの頃に読んだ本が半世紀の時空を超えて頭の中によみがえってきた。それらの本に気持ちを高められて、研究がどんな意味を持つかを課題にした「科学と人間」の授業の企画ができた。小学生から中学生の頃に愛読した一冊の科学啓蒙書に影響されて、数式になるべく頼らないで物理学を知り、身近な現象について考える力を養おうとする「自然界の構造:おはなし物理学」の授業内容が構想できた。それらの科目の詳しい説明はさておき、それらを企画・構想する基となった本を紹介しよう。私が出会った本の一部である。物理学に偏っているが、物理学が学問の樹における幹の位置にあるのだから、として許していただきたい。手にとって読んでもらうと良いが、少なくとも参考になることをのぞんでいる。君たちがそれぞれ読みたい本、君たちを育ててくれる本と出会うことが願いである。(2014年2月)46