ブックタイトル2016読書の年輪 -研究と講義への案内-

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概要

2016読書の年輪 -研究と講義への案内-

アインシュタイン/インフェルト著物理学はいかに創られたか(上・下)石原純訳、岩波新書、上1939年、下1940年二十世紀に活躍した世界最有名人で相対性理論を打ち立てた人として知られるアインシュタインは理論物理学者の中でも代表的な存在だ。自然現象を相手に人間の心が物理学という「物語」をどのように作り上げようとしてきたか、evolution(発展、進化)として語っている。数式を使わないで「たとえ」で説明し、要所に図・写真を使った丁寧かつ明快な記述である。まず、ニュートンの力学とファラデーとマックスウェルによる電磁気学の歴史を「力学的世界観の『勃興』と『凋落』」として語り、物理学としての内容を説明し、自然科学とは人間のいかなる活動であるかを教えてくれている。次いで相対性理論・量子論を詳しく説いている。アインシュタインはボーアらの波動関数の「確率解釈」を認めなかった人だが、そこはインフェルトがしっかり書いてくれた。訳者の石原純(元東北大学教授)はアララギ派歌人でもありきれいな日本語で書かれている。初版以来70年そのまま発行され続けた文面はいくらか古めかしいが。視覚的にはほとんど文字ばかりであるがそれだけに、内容がぎっしり詰まっている。文系理系を問わずに思考力と知的好奇心を備えた学生なら読み進められる名著である。ポアンカレ著科学と仮説河野伊三郎訳、岩波文庫、和訳初版1938年(原書1902年)クラスメート達のおかげでこの本に出会った。量子論・電磁気学など専門基礎科目を学ぶのに忙しかった頃、泊まりがけの読書会の提案があり、かなりの人が参加した。伊豆にあった大学の施設だったが、楽しい集まりだった。読んだ本がこれである。ポアンカレは数学者だが理論物理学者・天文学者としても功績を残している。論文だけでなく著書の数も膨大である。科学思想については、この本が彼が書いた最初のものであり、最も有名である。私達が直接に興味を持ったのは第九章「物理学における仮説」であったのだと思う。物理学は実験によって真実を知る学問である。だが、それなら数理物理学の役割は何なのか。ここで、事実の集積が科学ではない、それは石を積み上げても家にはならないのと同じだ、という。良い実験は一般化を許す、これにより充実してゆく科学を蔵書が絶えず増大する図書館にたとえると目録を調整する役割を果たすのが数理物理学だ、という。一般化はそれぞれが仮説であり、物理学ではそれは多く数学的形式をとる。こう始めて、科学がどう発展してきたか、どうあるべきかを豊富な例をあげて教えてくれる。科学を学ぶ人にも哲学を学ぶ人にも優れた古典である。47