ブックタイトル2016読書の年輪 -研究と講義への案内-

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概要

2016読書の年輪 -研究と講義への案内-

海老澤丕道EBISAWA, Hiromichiジェームズ・D・ワトソン著二重らせん―DNAの構造を発見した科学者の記録―江上不二夫/中村桂子訳、ブルーバックスB-1792、講談社、2012年科学研究の現場の話は一般の人たちには小難しくなってしまい、面白くもないだろう。これは私が研究を始めた頃に抱いていたイメージであった。ところが、この本を読むと、研究がどんなに人間的であり、社会的であり、すごいドラマの展開であるかを如実に感じることができる。遺伝子の所在は細胞の核にある核酸、DNAの上であろうと分かり始めた時代に、DNAの物理的な構造模型を提唱したのが著者ワトソンとその共同研究者フランシス・クリックであった。その基となったX線回折の研究を行ったモーリス・ウィルキンスとともに1962年のノーベル生理学・医学賞を受けている。研究は1951年から1953年にかけて展開されたが、その経過の実に人間臭い記録が本書である。私は博士課程の学生だった時に、原著が書かれた(1968年)同年にタイムライフインターナショナル社から出版された同じ翻訳者達によるものを読んだ。確かに、どんな経緯で研究が進んだかよく分かった。読んで感動したと言うより、競争相手、協力者他登場人物の関係の複雑さに驚いた。一方で、ワトソンの強烈な個性に対して違和感を覚えた気もする。佐野昌一著おはなし電氣學科學知識普及會(明治書院発売)、1939年(絶版)こんな感じの本を今、知識欲盛んな子供達が食い入るように読み進むところを想像してみると本当に楽しい。電子の話から始まってざっと挙げると、静電気、電流、電磁気の話、発電の話、家庭内の電気の話、電車の話、電気機関車の話、電話の話、電話交換機の話、放送の話、真空管の話、電波の話、落雷の話、映画の話、テレビジョンの話まで47話の構成である。縦書き、右めくりの、小説スタイルである。それもそのはず、著者は逓信省電氣試験所研究員の技術者ながら海野十三(じゅうざ)のペンネームでSF小説や探偵小説を書いた作家でもある。著者自身手書きの挿絵も豊富であり、楽しめる。序文にテレビジョン開発で知られる川原田政太郎元早大教授が、「快著」であるとしてその平易さ、面白さ、かゆいところに手が届く様を賞賛している。アマチュアファンのみならず、学生、専門家もこれによって真の意味を初めて掴み得るところ多々とある。私は父の書架で見つけ、出版後10数年を経たこの本の虜になってしまい、小学生時代から電気が好きになった。今は内容的には古い部分がほとんどだが、この本を読み返すと科学技術の知識とはかくあるべきだということがよく分かる名著である。附属図書館に収蔵されている。49