ブックタイトル2016読書の年輪 -研究と講義への案内-

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概要

2016読書の年輪 -研究と講義への案内-

Institute of Liberal Arts and Sciences,Tohoku University柳父圀近YAGYU, Kunichika退職「大学時代でなくても、できること」ではなく柳父圀近YAGYU, Kunichika総長特命教授(2009年度~2010年度。2011年3月末退職)、東北大学名誉教授(大学院法学研究科)、博士(法学)専門分野:西洋政治思想史、マックス・ウェーバー研究担※2010年度当科基礎ゼミ:「文明論の概略を読む」/「福沢、岡倉、内村―西洋化と知識人」目基幹科目:「法・政治と社会:政治学入門」/「歴史と人間社会:職業観念から見る社会史」総合科目:「西洋史と政治思想」私は長らく西洋政治思想史を担当してきました。とくに近代西欧に生じた市民社会の特質と近代国家の関係を、またマックス・ウェーバーの学問と思想を研究テーマとしてきました。川北でもその関連のテーマで授業をします。それはそうと、皆さんはこれからの大学時代をどのように使おうと思っていますか?大学で勉強するということは、「世界の多面性」を知り始めることではないかと私は思っています。皆さんも、世の中にはいろいろな考え方があって、いろいろな価値観を持った人たちがいるのだということに次第に目覚めるのではないかと思っています。大学で、異なる価値観からは、世界のあり方が、自分の見方とは違って見えて来るのに気がつくことは大切です。(世の中の多様な考え方に接するのは、社会人になってからではないか、と思うかもしれません。しかし社会人になると、案外その組織や業界の一つの考え方とか時代の空気などに染まってしまうものです。)大学では、授業を通じて、それまでの自分の頭とは違った考え方や、物事の捉え方に出会うでしょう。いろいろな学説や本に出会います。また、生身のいろいろな先生たち、友人たちとディスカッションして、くり返し、「世界の見え方」の多面性に目覚めて行くことになるでしょう。しかも「いろいろな見方」を、「私利私欲」を離れて検討し、理性的・批判的に深く考察する訓練を体験するはずです。そしてそれこそは、大学生活ならではの、一種の「純粋経験」ではないかと私は思っています。そしてその中で先生や友人たちとの交流を深めてゆくことができれば、それも生涯の「財産」になるだろうと思います。4年間はアッという間です。しかし上手に使えば実りの多い時間です。ですから何であれ、「大学でなくても」できることや、「大学を出てからこそ」できることに、学生時代を使うのは賢明ではないと思います。「大学でなければ」できないのは、たぶんこの知性の「純粋経験」でしょう。大学には、さまざまな立場の研究者がいることが必要であり、学生は、多様な立場の学問に接し得る必要があるということです。また是非いろいろな本や文献に接してほしいと思います。この後すこし本を紹介しておきますが、それはあくまで私の講義との関係で参考になるものを紹介するという限りのものです。(2011年2月)50