ブックタイトル2016読書の年輪 -研究と講義への案内-

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概要

2016読書の年輪 -研究と講義への案内-

マックス・ウェーバー著職業としての政治脇圭平訳、岩波文庫、1980年、原書1919年古今の「政治の世界」に通じた著者の知識が惜しげもなく使われ、また「政治と人間」についての深い思索が語られている、まずは類例のない講演です。もちろん時代の制約を受けています。しかしぜひ読んで、いろいろ考えてみてください。第一次大戦直後の混乱したミュンヘンで学生団体の求めに応じた講演ですが、今日でも大きな影響を、政治に関心のある人々(政治家だけではなく)に及ぼし続けています。ひとつの行為がもたらし得る「意図せざる結果」をも、できるだけ予測して(その予測のためにこそ、社会科学は存在する)、そうした「意図せざる結果への責任」をも引き受けるのが、政治における倫理的態度(=「責任倫理」)だ。それは「動機の純粋性」に生きる「心情倫理」(信念倫理)の態度とは違ってくる、という議論を―他にもいろいろ「政治の世界」の特質を論じていますが―とくにじっくり読んでみてください。変則的なアドヴァイスですが、この本に限っては、最後から読み始めて、前へ前へとさかのぼり、もう一度頭から読むのがよいかも知れません。大塚久雄著社会科学における人間岩波新書、1977年この本はNHK大学講座の講義をもとに書かれています。学生時代に読んでから今日まで多くの示唆を与えられて来ました。社会科学はまず近代の西洋で、近代西洋人とその社会を自明の前提として形成されました。しかしそのままでは近代西洋以外の時代や文化圏の諸社会について学問的に分析するのには無理が生じます。例えば近代日本の人間と社会には、近代西洋の場合と重なる面もありますが、大きな違いもあります。西洋の場合と学問的に比較するにはどうすればよいでしょうか。もちろん共通する要素の分析は重要です。しかし、それぞれの社会の人々の社会的行為の「主観的動機の意味」をよく理解し、社会現象を、その動機を「原因」として生じるものとしても因果関係的に十分説明する必要があります。この場合、それぞれの社会の文化、特に宗教意識の影響は大きな意味を持ちえます。そうした宗教文化との関係で生じる「人間類型」ないし「エートス」に注目して社会科学の新たな方法を形成したのがマックス・ウェーバーでした。大塚さんはウェーバーのこうした方法をマルクスの歴史理論との関係で考察しながら、独自の方法へと展開しています。51