ブックタイトル2016読書の年輪 -研究と講義への案内-

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概要

2016読書の年輪 -研究と講義への案内-

マックス・ウェーバー著プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神大塚久雄訳、岩波文庫、1989年、原書1920年現代社会科学の古典のひとつ。単なる「営利欲」や「投機」、また政治的特権に「寄生」する営業ではなく、ひたすら「合理的な隣人愛」実践としての職業活動にいそしむことへと、当時の人々を強く動機づけたのが、プロテスタンティズムの職業観念だったと分析しています。「社会」とはある意味では「職業」のネットワークです。プロテスタンティズムの「職業観念」は、封建時代の職分のネットワークたる「身分制社会」を一変させ、「市場」に媒介された「市民社会」を形成する社会の動きを加速させた。こういう分析です。しかし歴史はここにとどまらず、同じプロテスタンティズムの「職業観念」は、意図せざる結果として、とどまることを知らない近代資本主義の進展にスイッチを入れました。その進展の先に生じる「人間疎外」の問題も、本書は鋭く論じており、現代の社会科学に大きな影響を与えています。ところで、西欧とは違う文化伝統のもとにあった日本や東アジアの「近代化」の場合、こうした問題にあたるものは一体どうなっていたのでしょうか?こうした問題関心にもいざなう本です。福田歓一著近代の政治思想―その現実的・理論的諸前提―岩波新書、1970年「デモクラシー」とか「国民国家」と云った政治制度や政治理論の多くのものは、ヨーロッパの歴史の中で形成されて来たものです。もちろん、現代の世界では、ヨーロッパ文化圏の重みは相対化されていますし、また時代的にも「近代」と「現代」では大きな変化が生じています。しかしそれだからと云って、政治について考えてみようという場合は、また積極的に政治学を学びたいという人は、西洋近代の政治学、政治思想の歴史を学ばないですますわけにはゆきません。中世や古代のヨーロッパ政治思想についても学んでゆく必要があります。デモクラシーと云う言葉が、古代ギリシャに由来することは知っているのではないでしょうか。この本は、戦後の政治学と西洋政治思想史研究の発展に大きな役割を果たし、07年に亡くなった著者の、岩波市民講座の講演がもとになっています。学生時代に読んで政治思想史の扉が開かれた感のあった本の一つです。なお、少し難しいかもしれませんが、同じ著者の、2009年刊行された論文集『デモクラシーと国民国家』(岩波現代文庫)も読んでみるとよいでしょう。52