ブックタイトルまなびの杜 2016年夏号 No.76

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概要

まなびの杜 2016年夏号 No.76

では女性研究者支援を中心とする男女共同参画が推進されています。東北大学では、二〇〇一年に全国に先駆けて男女共同参画委員会を立ち上げ、男女共同参画に関する意識・実態の調査、意識醸成のためのシンポジウム開催、教職員のための保育施設の設置等により男女共同参画を推進してきました。研究者を対象に、一時的な研究支援者の雇用、ベビーシッター利用料の一部援助といった制度を整備して、男女を問わず子育てや介護のために研究活動が滞ることがないよう支援しています。さらに女性研究者に対しては、交流機会の提供や研究活動支援を行っています。例えば、二〇一〇年からは「沢柳フェロー」と食事をしながら研究や生活について気軽に話せるランチミーティングを年数回開催しています。「沢柳フェロー」とは、女子学生に門戸開放することを打ち出した初代総長の名前に因んで名づけられた女性教授を指します。専門分野を超えた研究者同士の交流からは、新しい研究プロジェクトも生まれているようです。優秀な女性研究者に対しては、研究費や学会参加の際の旅費を補助する制度もあります。四年制大学への女子の進学率は五割近くになりましたが、大学の教員にはまだまだ女性が少ないということを皆さんご存じでしょうか。一九一三年に、日本の大学として初めて三名の女子学生が入学した東北大学では、女性が少ない理学、工学などの研究者が大半を占めることもあり、女性は教員全体の約十一・二%を占めるにすぎません。女性教員が少ない理由として家庭と仕事の両立が困難、候補となる博士号取得者が少ないなどがあげられます。優秀な研究者、あるいは教育者であれば、教員の性別など問題ではないとも言えますが、現在のように極端に女性が少ない状況には問題があるでしょう。まず学生は、最も身近な専門職である大学教員に女性はなりにくいという先入観を持ちかねません。数的マイノリティである女性教員の中には、家事や育児との両立の苦労を周囲に理解してもらえないことを悩み、辞めていく人もいます。大学教員集団が多様な人材から構成されることが望ましいという考え方の下、日本の多くの大学女性教員を増やすためには、研究に興味を持つ次世代の育成も重要です。東北大学には、自然科学系の女子大学院生による「東北大学サイエンス・エンジェル(SA)」制度があり、二〇〇六年の創設以来、総長に任命された数十名のSAが、小中高生やその保護者・教師に対して科学の魅力や研究の面白さを伝える活動を行っています。SA制度は、女子大学院生自身にとっても、他研究科の院生やSAの先輩、女性研究者と交流し、成長できるかけがえのない機会となっています。女性だけを支援することには賛否両論があることも確かですし、大学にできることは限られています。それでも、女性教員が少ない大学教育現場の現状を変えるために、女性研究者が活躍できるよう支援することが必要です。できるだけ早く女性研究者支援が不要の時代が来るよう、東北大学における男女共同参画を推進していきたいと思います。大学教育現場の現状女性教員が少ないことによる問題東北大学での取り組み東北大学サイエンス・エンジェルの活動終わりに保坂雅子◎文text by Masako Hosakaまなびの杜76号|01東北大学サイエンス・エンジェルの活動「教育」考│新世代へのメッセージ│保坂雅子(ほさかまさこ)1968年生まれ現職/東北大学男女共同参画推進センター助教専門/高等教育(大学における女性問題)関連ホームページ/http://www.morihime.tohoku.ac.jp/東北大学における男女共同参画の推進