ブックタイトルまなびの杜 2016年夏号 No.76

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まなびの杜 2016年夏号 No.76

坂野井健?文text by Takeshi Sakanoiまなびの杜76号|03オーロラの謎と神秘極地方の夜を彩るオーロラ―マイナス三十℃の寒さの中、震えながら夜空を見上げると、緑や赤の光が突然輝き始め、あっという間に全天を覆いつくします。その光の帯は目で追えないほど激しく動き回り、まるで自分が光のシャワーの中にいるかのように感じます。この神秘的な感動は、何度オーロラを見ても褪せることはありません。事実、オーロラ現象について近代的な研究が行われ始めてから百年以上経ちますが、今なお多くの世界中の研究者の関心と興味を集めています。十九世紀以前には、オーロラは虹のような現象でないかと考えていた人もいました。ところが、オーロラを観測したところ高度百?三百kmという結果になり、虹が起きる高度(十km以下)よりもずっと高いことがわかりました。また、約百年前にオーロラを分光して調べた研究者がいました。分光とは、プリズムなどを用いて光を色(波長)ごとに分け、どの色の光が強いかを調べる手法です。虹は、大気中の水滴がプリズムの働きをして太陽の光が分光されたもので、青から緑・黄・赤まで連続しています。ところが、オーロラを分光すると緑や赤などの限られた色しかありませんでした。この特徴が「真空放電」であることは、当時から研究者にはよく理解されていました。真空放電は、看板などで見られるネオン管と同じ発光です。ネオン管のガラス管中には、電極と希薄なネオンガスが入っています。この電極に数kVの電圧をかけるとガラス管の中に電子がビーム状に走ります。この際に、電子とネオンガスが衝突して発光します。発光する色はガスの種類で決まっており、別のガスを入れると異なる色で発光します。分光観測からオーロラとネオン管は同じ真空放電発光であることがわかりましたが、オーロラの場合のガスは何でしょうか?また、ガスと衝突する電子はどこから来るのでしょうか?高度百km以上の地球大気は、ネオン管内と同じように真空に近く希薄なガスです。そこへ宇宙空間から電子が降り注いで、大気と衝突して発光する│これがオーロラです。オーロラの主な発光を起こすガスは酸素原子であることが知られています。高度百kmでは、太陽からの紫外線により酸素分子は原子に分かれます。ご存じの通り、酸素は主に植物の光合成で生成されますので、地球で緑や赤のオーロラが見られるのは、生命ある惑星ゆえかもしれません。小型科学衛星「れいめい」が解き明かすオーロラの謎オーロラの謎には、なぜあのような形(複雑なカーテン状やまだら模様など)になるのか、そしてなぜ激しく動くのかがあります(図1)。これまで述べたとおり、オーロラ発光は電子と大気が衝突することで起きるため、宇宙空間から電子がどのように降り注ぐのかが問題となります。この問題について、一九六〇年代以降ロケットや人工衛星を用いて盛んに研究された結果、高度数千?数万キロメートルの宇宙環境に原因があることがわかってきました。一方、激しく形を変えて動く理由は、太陽から地球に至る大規模な宇宙空間の物理過程の結果であることがわかってきました。このように、オーロラに関わる現象を調べることで、地球周辺の宇宙環境や太陽からのエ瞬くオーロラの謎特集―脈動するオーロラの仕組みを解明―図1/オーロラのいろいろな種類。カーテン状オーロラ(左)と脈動オーロラ(右)。